クラスターの定義を拡大してまで「子供の中で新型コロナ感染拡大が深刻」と煽る厚労省に読売新聞が歩調を合わせる

 読売新聞が9月16日付の記事で「2学期が始まった小学校でのクラスター件数が先週と比較して2倍になっていることが厚労省の発表資料から明らかになった」と報じていますが、この記事はファクトチェックの対象であるべきです。

 なぜなら、クラスターの定義が変わっているからです。

 「同一の場所で2人以上の感染者が発生した場合をクラスター」と定義しており、従来の「5人以上」とは条件が異なります。『従来の条件』では真逆の結果となるため、フェイクニュースの疑いがあると言えるでしょう。

 

読売新聞が報じた記事と元ネタ

 読売新聞が報じた記事の元ネタは9月16日に行われた第52回新型コロナ対策アドバイザリーボードで厚労省が提出した『資料2-7 3~18 歳の新型コロナウイルスの感染場所(PDF)』です。

学校種別の集団感染件数・割合の推移

 資料で言及されているのは「同一の場所で2人以上の陽性者が出たと報道された事案の件数のうち、学校等で発生した事案についての分析を行ったところ直近では小学校で件数が増加していた」というものです。

 ただ、この資料は『クラスターの定義』が変更されたものです。『クラスターの定義』が以前のままであるなら、上述の結論は成り立ちません。したがって、問題のある資料を用いた報道と言わざるを得ないでしょう。

 

読売新聞が目を背ける厚労省が発表した資料に含まれている問題点

問題点1: クラスターの定義は「同一の場所で5人以上の陽性者」

 まず、読売新聞は「厚労省が定めたクラスターの定義」に疑問を持つべきでしょう。なぜなら、厚労省が管理する『データからわかる ー 新型コロナウイルス感染症情報 ー』では以下の定義が用いられているからです。

クラスターの定義

 「同一の場所において5人以上の感染者が発生したと厚労省が把握した事案」をクラスターとして扱っているのです。

 にも関わらず、アドバイザリーボードに提出した資料では「同一の場所で2人以上」と範囲を拡大しました。これは「小学校での新型コロナ感染拡大が深刻との誤解を招く行為」と言わざるを得ないでしょう。

 

問題点2: 学校や教育施設でのクラスター発生件数は「8月下旬以降は減少中」

 その根拠は「学校や教育施設でのクラスターの発生件数は減少中だから」です。

クラスター発生状況(2021年8月下旬以降)

 前述のサイトで公表されている『学校・教育施設等』でのクラスター発生件数は直近(≒ 9月6日〜12日)は27件で、先週の半分以下となっています。

 つまり、クラスターの定義が従来の『同一の場所で5人以上の陽性者』が適用されてしまうと「小学校でのクラスター件数が9月6日から12日で32件に上った」は成り立たないのです。

 「不安を煽るために定義を『同一の場所で2人』に変更した」と見ざるを得ないでしょう。

 

 公表された資料で用いられている『クラスターの定義』が『従来の定義』と異なっていることに気づかない人は少なくはないでしょう。

 そうした人が「子供たちを新型コロナから守るために対策をせよ」と声を上げることは容易に想像できますし、厚労省の狙いは “それ” です。

 コロナ対策の名目で多額の予算を使える厚労省に “コロナ・バブル” を終わらせるメリットはありません。コロナ対策を終えてしまうと「対策の是非」が俎上に乗りますし、国家財政や経済のことは他人事で済むタックス・イーターの立場だからです。

 新型コロナを指定感染症から1類相当に変更し、『コロナ対策禍』を大きくした原因の一端が厚労省にあることが示されたと言えるのではないでしょうか。