社人研、2020年の国勢調査を基にした将来推計人口で「2022年の超過死亡発生」などを予言した推計を発表

  国立社会保障・人口問題研究所が “2020年の国勢調査” を基にした『2021年から2070年までの人口について推計』を発表しています。

  この推計で問題なのは「 “2020年の国勢調査” が基なのに2022年の超過死亡や出生数の維持」など『政府や厚労省にとって都合の良い数値』が政策の基準となる【推計・中位】で記されていることです。

  社人研(国立社会保障・人口問題研究所)の上位組織である厚労省に忖度した将来人口推計を用いる際は注意が必要になります。


出生数の推計値と実数値

  まず、【2015年の国勢調査を基にした将来推計人口】では年間出生数が80万人を下回るのは『中位』のシナリオで2033年(79.7万人)でした。

  ところが、新型コロナ対策によって少子化の進行スピードが加速。『現実』には2022年の年間出生数が78万程度にまで “一気に” 減少してしまいました。

  出生数の『推計・中位』で記された将来人口を基に「社会保障制度の持続可能性」などを議論するため、予想を上回る少子化の進行は厚労省にとって非常に都合の悪いことです。

  だから、【2020年の国勢調査を基にした将来推計人口】で「2032年まで年間出生数は『中位のシナリオ』で77万人台を維持する」との荒唐無稽な推計を算出したのでしょう。

  厚労省はコロナ対策で「若者(や子供)の生活と出生数」を犠牲にして「後期高齢者の寿命(と医療業界などの高齢者産業)」を守る政策を採ったのです。

  そのような国では子供に投資をするメリットが薄れますし、将来の子育て世代である若者が社会保険料の負担に苦しんで婚期を逃しては本末転倒です。少子化の進行に歯止めがかかることは期待できないでしょう。



死者数

  出生数は “バカげた推計” が報告されていますが、死者数も「思わず2度見をしてしまう推計」が堂々と報告されています。

  日本での死者数は2019年までは【2015年の国勢調査を基にした将来推計人口】の『死亡・中位』とほぼ同数でした。2020年は上半期の死者数が『推計・低位』で推移したため、前年割れとなったのです。

  つまり、【2020年までの実績値や2020年の国勢調査を基にした将来推計人口】ではどのような『数理モデル』を用いたとしても「2022年にイレギュラーな年間死者数が発生」を予測することはできないはずです。

  「翌年の2021年に2020年に死を免れた後期高齢者が死亡」する “清算” が起こることはあっても、翌々年の2022年に大規模な超過死亡が起きると予測する『数理モデル』は存在しないでしょう。

  現実的には「2022年の年間死者数が『推計・中位』と『推計・高位』の中間値」となるよう初期段階で設定し、2030年代の死者数を減らすことで『年間死者数の総和』の帳尻を合わせる処理を行っただけでしょう。

  【2020年までの実績値や2020年の国勢調査を基にした将来推計人口】で『推計・高位』の2021年の年間死者数が「151万8000人」から「157万9000人」に変更されている時点で結論ありきと言わざるを得ないからです。