忽那賢志氏、厚労省・ワクチン副反応検討部会の不適切データを用いて若者に新型コロナワクチン接種を促す

 執筆活動にも精を出している医師の忽那賢志氏が「ファイザー製・モデルナ製のワクチンはどちらもベネフィットがリスクを上回っている」と主張するツイートをしています。

 このツイートは根拠として用いられているデータが不適切です。過去記事で指摘したように「リスクが極端に矮小化されている」のです。そのことを誤魔化して新型コロナワクチン接種を促すのは悪質と言わざるを得ないでしょう。

 

忽那賢志氏が行なったツイートと元ネタ

 忽那氏が行なったツイートは以下のものです。

 このツイートの元ネタが10月15日(金)に行われた第70回・ワクチン分科会副反応検討部会で提示された資料(PDF)であることは明らかです。

画像:心筋炎などの発症頻度比較

 過去記事で言及したように、上述の資料で言及されている内容には「比較対象が明らかに不適切」という問題があるのです。その点には触れずに「ベネフィットがリスクを上回る」など論外と言わざるを得ないでしょう。

 

忽那氏が隠す新型コロナワクチン接種で被るデメリット

1:心筋炎の発生リスクを比較する際の分母がおかしい

 まず、心筋炎の発生リスクを比較する際に用いられた分母が不適切です。

心筋炎 入院患者 ワクチン接種者
/ コロナ陽性者





10代 Pf 7 X 2,939,003
10代 Mo 13 X 707,338
20代 Pf 20 X 3,476,590
20代 Mo 47 X 3,168,818
新型コロナ罹患
【15〜39歳】
4 4,798

 『新型コロナワクチンを接種した際に生じる心筋炎』では「ワクチン接種者」が分母に用いられているのですが、『新型コロナ罹患時に生じた心筋炎(および疑い)』では「入院患者」と分母が制限されています。

 これでは正しい比較対象を行うことは不可能です。

 「ワクチン接種者で入院した人」とするか、「新型コロナ陽性者」とした上で比較をしなければなりません。「ワクチン接種のリスクは低く新型コロナ罹患のリスクは高く印象付ける」ことをしているに等しいのです。

 専門家としてあるまじき行為だと言わざるを得ないでしょう。

 

2: 39歳以下で「新型コロナ罹患時での心筋炎は4件」に過ぎない

 忽那氏が用いた主張の根拠は資料にある以下のスライドです。

画像:新型コロナ罹患による心筋炎の発症頻度

 この中で「『感染者100万人あたりの心筋炎関連事象者数』は15歳から40歳未満の男性で834名」と記載されているからです。

 しかし、分母に該当する「対象の人数」は「新型コロナと診断され入院した症例」と明記されています。つまり、『感染者100万人あたりの心筋炎関連事象者数』ではなく『入院患者100万人あたりの心筋炎関連事象者数』なのです。

表: 年齢階級別の累計陽性者数(日本・男性)
3月31日時点 5月26日時点 差分
80歳超 14,129 19,167 5,038
70代 19,185 27,094 7,909
60代 22,681 33,214 10,533
30代 40,149 60,858 20,709
20代 53,406 83,381 29,875

 2021年4月と5月に報告された20代および30代男性の新型コロナ新規陽性者数は少なくとも5万人です。60代以上の2倍以上であり、用いられている数値が不適切なのは言うまでもありません。

 ワクチン接種をした女性が心筋炎を訴える症例が「1桁台」なのですから、リスク評価の方法を根本的な部分で間違っているの指摘はあって当然でしょう。

 

3: 新型コロナワクチン接種で心筋炎が問題になっているのは「29歳以下(の男性)」

 新型コロナワクチン接種による副反応で問題となっている1つか「若い男性への心筋炎」です。

 これを『年齢階級別で100万人あたりの心筋炎発症数』でリスク表示するなら、新型コロナ罹患時の心筋炎発症数も「年齢階級別」で比較対象ができるようにしなければなりません

 なぜなら、心筋炎の発症数は年齢に比例するからです。“アラフォー間近の男性が(細菌やウイルスの感染で多くは生じるとされる)心筋炎の発症報告数を引き上げた数値” を基にした算出されたリスク評価を『10代』や『20代』に適応すべきでないことは明らかです。

 『ワクチン接種による心筋炎の発症リスク』は『健康な同年代が過去1年間で新型コロナに感染した後に入院して心筋炎が発症するリスク』と比較されるべきでしょう。

 そのために必要な最低限の情報公開すら厚労省は怠っている状況なのです。また、それを使って新型コロナ罹患時の重症化リスクが低い健康な若者に新型コロナワクチン接種を促している忽那氏の行為も支持できるものではありません。

 

 ちなみに、厚労省の資料で使われている『感染者100万人あたりの心筋炎関連事象者数』というデタラメな数値を算出した COVID-19 Registry Japan の研究責任者は東京都のモニタリング会議でメディアに頻繁に登場する大曲貴夫氏です。

 コロナ禍を煽ったり、ワクチン接種による健康被害が出た方が “オイシイ思い” をする側にいる人々が騒いでいるとの警戒感を持つ必要があるのではないでしょうか。