神奈川県による「接種回数増えるほど死亡率が下がる傾向」との発表を基にワクチン接種を勧める人々が知るべきこと
神奈川県が HER-SYS に登録されたデータから「新型コロナワクチンの接種回数が増えるほど死亡率が下がる傾向がある」と発表したことを東京新聞が報じています。
この発表を基に「新型コロナワクチンの有効性が示された」と接種を推奨する人々が(ネット上で)散見されますが、その情報は鵜呑みにすべきではないでしょう。なぜなら、前提情報など必要な情報が省かれているからです。
神奈川県による調査対象は「65歳以上」で、その年齢層ですら死亡率は季節性インフル未満
まず、神奈川県が調査対象にしたのは新型コロナの脅威がある65歳以上の高齢者です。現役世代は「死亡率が低いこと」を理由に調査対象から外れています。
- 対象: 65歳以上
- 期間: 2022年7月1日〜2022年12月20日
- 死亡率:
- 接種情報の記載なし
- 1.11% (= 276/24490)
- 接種情報の記載あり
- 0回: 1.42% (= 113/7829)
- 1回: 1.27% (= 3/233)
- 2回: 0.97% (= 30/3060)
- 3回: 0.55% (= 162/29336)
- 4回: 0.33% (= 112/34140)
- 5回: 0.21% (= 5/2410)
- 接種情報の記載なし
“この情報だけ” で判断すると、「新型コロナワクチンを接種するほど死亡率は下がる」と言えます。しかし、新型コロナによる死亡率は季節性インフルエンザよりも低いのです。
2022年12月21日に行われた厚労省の新型コロナ感染対策アドバイザリーボードで「2022年夏の第7波では60代以上の高齢者層においても新型コロナの重症化率と致死率は季節性インフルエンザを下回る」と報告(PDF)されたのです。
この事実を無視した新型コロナ対策の特別対応を継続する合理性はありません。『季節性インフルエンザへの対応』に合わせようとしない行政や医療関係者は厳しく断罪されるべきでしょう。
神奈川県の65歳以上の 90% が2022年夏の時点で「新型コロナワクチンを3回接種済」という事実
次に、神奈川県の65歳以上は約234万人ですが、その内の 90% は2022年7月1日の時点で新型コロナワクチンを3回接種済です。これは政府のダッシュボードからデータを抽出すれば確認が可能です。
神奈川県が調査対象にした『65歳以上』は2022年7月1日時点で 90% 弱の約210万人が3回目接種を完了していました。その後、2022年夏の第7波に合わせて4回目接種がピークを迎え、10月下旬には4回目接種者の割合が 80% 弱に達しています。
オミクロン株対応ワクチンの接種が始まった2022年秋からは5回目接種が本格化。調査期間の最終日である2022年12月20日の時点では5回目接種者が 50% で過半数と常にワクチン接種が行われていたことに留意が必要です。
65歳以上のワクチン接種からの経過日数
『最後の接種日からの経過日数』を確認しますと、2022年2月・3月のオミクロン株による感染拡大に合わせて3回目接種が行われた関係で “最後の接種日から120日以上が経過した人” が2022年7月1日時点で多数派でした。
ただ、これもオミクロン株対応ワクチンの接種に必要な間隔が「3ヶ月」に短縮されたことで “最終接種から120日以内の人” が200万人弱にまで増加していることが示されています。
この条件下で『新型コロナによる死者数』が過去最多を更新したのですから、新型コロナワクチンの有効性に疑問符が付くことは避けられません。
『新型コロナによる死者数』には「死因が新型コロナではない死者」も計上されていますが、一部の医療従事者は「超過死亡が起きた原因は新型コロナの感染拡大」との煽りを続ける有様です。これでは高齢者でさえ接種に消極的になるでしょう。
交絡因子はどこへ?
最後に『交絡因子』についても触れておく必要があるでしょう。交絡因子とは「データ解析における因果関係の判断を惑わせる要因」のことです。
神奈川県は『HER-SYS の登録データ』を用いて「接種回数増えるほど死亡率が下がる傾向」と報告しましたが、『HER-SYS の登録データ』からは「3回目接種者の方が未接種者よりも陽性反応を示しやすい」と示されているのです。(過去記事参照)
「ワクチン接種者の方が新型コロナにかかりやすい」との不都合な科学的根拠を突き付けられたことへの反論が「交絡因子を考慮していない『HER-SYS データ』を抽出しただけの数値では無意味」とのものでした。
つまり、神奈川県が示した「接種回数増えるほど死亡率が下がる傾向」との報告も「交絡因子を考慮していない『HER-SYS データ』を抽出しただけの無意味なもの」と “一蹴” される代物になってしまうのです。
ワクチンの接種効果を検証するなら、『健康状態と生活習慣が同じ対照群』を用意することが前提です。今回だと「ワクチンを接種することもできない脆弱な健康状態の人」を外す必要があります。
それを無視してワクチンの接種効果だけを強調する人はコロナ対策を続けることで経済的または社会的な利益を得る人々でしょう。新型コロナの脅威は季節性インフルエンザ未満なのですから。