厚労省がワクチン接種回数の HER-SYS への入力を求めなくなった背景は「ワクチン接種の有効性」を示せないから

  厚労省が「医療・保健所の負担軽減」を理由に HER-SYS への65歳未満の新型コロナ陽性者のワクチン接種回数などの入力を求めない簡素化を行ったと時事通信などが報じています。

  しかし、これは表向きの理由でしょう。新型コロナワクチンに接種効果があるなら、『ワクチン接種歴』は極めて重要な情報だからです。

  厚労省や専門家は「新型コロナワクチンには感染防止や重症化抑止が期待できるので早めの接種を」と訴えていましたが、その根拠を捨てる決断をしたのです。それが何を意味するのかは改めて明記する必要すらないでしょう。


時事通信の元ネタは8月2日の後藤厚労相による記者会見

  厚労省が HER-SYS への入力情報の簡素化を決定したのは8月2日に後藤厚労相が記者会見で方針転換を表明しているからです。

  医師からの報告義務についてHER-SYSの簡素化や、重篤ではない人だとか65歳以上でない方たちに対してはHER-SYSの打ち込みを大きく減らすことによって医療機関のひっ迫対策をやる必要があるということですぐに対応しました

  簡素化が正式に通知された8月4日にマスコミが一斉に「65歳未満のワクチン接種回数などの情報入力は必須ではなくなった」と報じたのです。

  厚労省は「業務量の削減」を目的との理由付けを行なっていますが、これは方便と言わざるを得ないでしょう。これをしてしまうと「新型コロナワクチンのオミクロン株への効果は無きに等しい」と認めたことと同じになってしまうからです。


3回目接種者と未接種者の人口10万人あたりの新規陽性者数はほぼ同数

  厚労省が HER-SYS の入力情報の簡素化に踏み切った1つ目の理由は「感染防止効果を主張できない」からでしょう。これはアドバイザリーボードに報告される資料で示されています。

  人口10万人あたりでの『3回目接種者の新規陽性者数』と『ワクチン未接種者の新規陽性者数』はほぼ同数です。

  未接種者が10万人を下回っている80代は別にして、20代から70代は時間の経過とともに『人口10万人あたりの3回目接種者の新規陽性者数』が増えおり、ワクチン接種効果の減衰が浮き彫りになっています。

  7月初旬の時点で40代と60代は「3回目接種者の方が未接種者よりも感染しやすい状況」であり、他の年齢層でもそうなるのは時間の問題です。

  したがって、厚労省が発表するデータそのものを取り扱わなくする動きを見せるのは驚くことではないでしょう。


誤差程度の重症化率で「ワクチン接種で重症化抑止を」と訴えるのは滑稽

  厚労省が65歳未満のワクチン接種回数の入力簡素化に踏み切ったもう1つの理由は「BA.5 の重症化率があまりに低い」からです。

  これは新規重症者数を発表している大阪府の数値から算出した各年齢層別の重症化率をグラフ化すると一目瞭然です。

  60代の重症化率でさえ 0.1% を下回っているのです。

  政府や専門家は「若者(や子供)のワクチン接種率が低いこと」に懸念を示していますが、“ワクチン未接種で体内の免疫機能が整い切っていない新生児” が含まれる『未就学児』で重症化率 0.02% を下回っている状況です。

  また、季節性インフルエンザの重症化率は「60歳未満で 0.03%」とアドバイザリーボードで参考値が示されていることから、現役世代や子供たちにとって新型コロナの脅威はインフルエンザ未満です。

  5000人に1人の割合である 0.02% をさらに下げるためにワクチン接種を求めたところで接種効果の有意性を示すことは困難でしょう。なぜなら、そもそもの数値が低すぎて参考にならないからです。



  未就学児の方が就学児よりも重症化しやすいのは季節性インフルエンザでも報告されていることですから想定の範囲内です。厚労省が「ワクチン接種回数」のデータ収集を放棄したのですから、新型コロナワクチンは「接種した効果が統計には示されない」が実情なのでしょう。

  政府の予算が適切に使用されているのかを監視していると息巻く報道機関こそ、「コロナ対策の適切な予算拠出が行われているか」の観点から追求すべきことなのではないでしょうか。