「節電の見返りは月20〜30円」と報じられた岸田政権、「節電エントリーで2000円相当のポイント支給」と火消しに躍起

  今夏の発電能力不足に直面した岸田政権が「節電プログラムに参加すれば2000円相当のポイントを支給することを検討する」と木原官房副長官が言及したと日経新聞が報じています。

  発端は「節電要請に応じた際の(電力会社からの)見返りが一般的な家庭で月 20〜30 円ほど」と報道されたことでしょう。

  月に数十円程度のポイントのために熱中症のリスクを背負うことは割に合いません。世間からの批判に慌てた岸田政権が「節電エントリーでポイント給付」というバラマキに奔走する結果となりました。


「モデル世帯で節電による還元は月数十円ほど」と日経が報道

  岸田政権の節電要請が世間から批判を招く原因になったのは日経新聞による6月21日付の記事です。

  電力不足が予想される場合に前もって協力を要請し、家庭の節電量に応じてポイントをつける。1キロワット時を節電した場合、東電は5円相当を、中部電は10円相当を付与する。
  東電では「Tポイント」や「Pontaポイント」「nanacoポイント」などに交換でき、買い物で使えるようにする。目標は3%の節電で、月260キロワット時を使うモデル世帯に当てはめると、月数十円ほどの還元となる。

  「東京電力が想定する『モデル世帯』が岸田政権の要請に応じて節電目標を達成した場合、ポイントの還元は月数十円ほど」と報じられたからです。

  これがネット上で拡散。週刊誌がウェブ記事で後追いするなど批判が強まっていました。そのため、岸田政権が “政府予算で” 節電に協力する家計へのポイント給付を検討するに至ったのでしょう。


燃料費調整制度による上限設定で電気代の値上げは阻害されている状況

  電力会社が節電をした需要家へのポイント給付に消極的なのは「自社資本を毀損する行為」だからです。『電力を販売する企業』が “電力の消費を思い止まった需要家” に報酬を与えるのは背任行為です。

  電力会社が節電ポイントの負担をすることに消極的なのは当然のことと言えるでしょう。

  また、電力会社は燃料費の高騰を価格転嫁することができていません。これは『燃料費調整制度』による上限が設けられているからです。

  岸田政権は「電気代上昇に切れ目なく対応する」と意気込んでいますが、対策は「(旧一電の大手)電力会社に燃料費高騰分の負担をさせる」というものばかりです。

  経営体力を削がれた電力会社が倒産しては本末転倒であり、エネルギー政策の失敗は政策を採用した政府が負うべきでしょう。


2022年度冬季の電力供給は今夏よりも厳しい

  岸田政権は今夏の電力逼迫を節電要請で乗り切ろうとしていますが、2022年度冬季の電力供給は今夏よりも厳しいことが経産省『電力・ガス基本政策小委員会』が5月27日に行った会合の資料(PDF)でも示されています。

  「7月は東北から中部エリアで3.1%と非常に厳しい見通し」と言及されているのですが、2022年度冬季は東京電力管内でマイナスです。

  西日本エリアでは2023年1月の予備率は 1.3% と今夏の東北・首都圏・中部エリアの予備率 3.1% よりも厳しい数字なのです。今夏を『節電要請』で誤魔化すことができるなら、冬季は『より一層の節電』が求められることになるでしょう。

  新型コロナ対策で「『自粛要請』は聞き入れられる」と行政は学習したのです。同じ対策が電力不足でも採られる可能性はあるとの認識を持っておいて損はないと思われます。



  「節電エントリーで2000円相当のポイント給付」となれば、“エントリーだけ” を行って節電を実施しなくても2000円相当のポイントを手にすることができるのです。そもそもの制度設計に問題があることを認識すべきでしょう。