「維新は原発再稼働による電気代抑制を提言した」と語る松井一郎代表は『原発廃止の株主提案への賛同』を呼びかける二枚舌

  6月22日に公示された第26回参議院議員選挙で日本維新の会の代表を務める松井一郎・大阪市長が「維新は通常国会で原発再稼働を訴えており電気料金を抑制できた」などと第一声をあげたと産経新聞が報じています。

  この主張を一貫していれば良いのですが、松井一郎氏は関西電力に対して『原発廃止の株主提案』を行い、他の株主に対して「大阪市などが提起した株主提案への賛同を呼びかける手紙を送付」しているのです。

  『原発廃止の株主提案』への賛同の呼びかけは2022年6月14日付で発送されています。1週間で主張が真逆になる政治家の発言は信用するに値しないでしょう。


参院選の第一声で「原発再稼働の要求」を実績としてアピールした松井一郎氏

  産経新聞が報じた6月22日に松井一郎氏が大阪市内で参院選に向けた第一声で原発再稼働に関する部分は以下のとおりです。

  今回自民党は『決断と実行』のキャッチフレーズ。安全性が確認された原発の再稼働をもっと早く決断していたら、電気料金を抑えられた。通常国会でわれわれ維新としても言ってきたが、力が足りなかった。

  この部分だけで判断すると、松井氏や日本維新の会は「エネルギー問題に対して現実的な政策を考えている政党」と言えるでしょう。しかし、そのように結論付けるのは時期尚早です。

  理由は大阪市は関西電力の主要株主であり、神戸市や京都市とともに『脱原発の株主提案』を提起しているからです。


関西電力に対する支離滅裂な株主提案を行った大阪市

  日本維新の会は『エネルギー政策』が弱点ですが、根底にあるのは「大阪維新の会が掲げるエネルギー政策」でしょう。なぜなら、今年6月にも大阪市が関西電力に対して『反原発の株主提案(PDF)』を行っているからです。

  この株主提案にも矛盾が存在します。それに気づいていないことは致命的ですし、株主提案による要求は『反原発に近い脱原発』であることを無視することはできません。

「脱原発社会の構築」と明記

  大阪市は株主提案で「脱原発社会の構築に貢献するため」と目的を明確にしています。この株主提案への賛同を求める手紙を “大阪市長・松井一郎” の名義で送付しているのですから、矛盾についての説明をすべきでしょう。

  また、“天災・武力攻撃を含む論理的に想定されるあらゆる事象” への『万全の安全対策』を要求しています。

  中国や北朝鮮が「原発恐怖症の日本政府を恫喝するために関西電力の保有する原発へのミサイル攻撃」は “論理的には” 想定できます。他国からの武力攻撃への『万全の安全対策』を講じることは民間企業である関西電力には不可能です。

  したがって、維新の会は『反原発に近い脱原発』と言わざるを得ません。

電力自由化が行われたので電力会社に「安定供給の責任」はない

  また、大阪市が株主提案をしている内容で問題なのは「電力会社に安定供給の責任がある」と主張している点です。

  原子力発電所が廃止されるまでの間においては、需要家に対する電力の安定供給の責任を果たすため、代替電源の創出、他の電力会社からの電力融通や発電事業者からの電力調達により供給力の確保に努める

  電力自由化が行われたのですから、関西電力に安定供給の責任はありません。関西電力は「株主の利益を最大化すること」が目的であり、「需要家への安定供給」のために『経営コストの悪い発電源を採用・維持すること』は許されないのです。

  この認識が欠落した株主提案は “自治体以外の他の株主” からの賛同を得られない現実を直視すべきでしょう。



  大阪市の松井一郎市長は電力会社の株主として「燃料価格の高騰を電気代に転化できない仕組みはおかしい」と『株主利益の最大化』のために声を上げるべきですし、維新の会の松井一郎代表は「電気代の上昇は受け入れられない」と主張しなければ民意を集めることはできません。

  板挟みになっているのは明らかであり、大阪市がおかしな株主提案を出さなければ墓穴を掘ることもなかったでしょう。維新の会の “泣き所” がエネルギー政策であることは橋下徹氏の時代から変わってないようです。