『起業家精神を養う教育』が上手く機能したとしても、日本に『起業に適した環境』がなければ徒労に終わる

  岸田政権が『スタートアップ企業を育成するための5か年計画』として、小中高生を対象にアントレプレナーシップ教育(起業家精神教育)を行う考えを示していると読売新聞が報じています。

  この試みは徒労に終わることでしょう。起業家精神を養うための教育が上手く機能したとしても、起業は「成功の確率が高くて起業家への見返りの大きい国や地域」で行われる傾向にあるからです。

  岸田政権は『事業』ではなく『人(=従業員への賃上げ)への投資』を要請しており、この方針を経営者が魅力的に感じる可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。


起業は『岸田政権が進める社会主義的な政策』とは真逆の存在

  どの国でも「起業家」は求められています。これは「起業した企業の経営が軌道に乗ることで大きな波及効果を手にすることができる」からです。

  その代表例が Dell でしょう。マイケル・デル氏が創業したコンピュータテクノロジー企業で本社のあるアメリカ・テキサス州のラウンドロック(やオースティン)は人口増による恩恵が生じています。

  ただ、そのためには「既存企業とは異なる経営価値観を認める自由」が必須です。

  既存企業と同じ経営価値観・経営手法では起業は上手く行かないでしょう。しかし、岸田政権は『社会主義的な政策』を進めており、起業に適した経済環境が用意されているとは言えません。

  社会主義国家のような『5か年計画』が都合良く機能する可能性は低いと思われます。


日本で起業家教育を受けた有能な人材が日本で起業するとは限らない

  また、岸田政権による『起業家精神を育成する教育』が上手く機能したとしても「日本での起業を見送られる懸念点」があります。

  “日本で起業して本社機能を日本国内に置く企業” の経営が軌道に乗ることで日本経済は恩恵を得られるのです。逆に、“日本で起業家精神を養った有能な人材” が日本国外で起業すると日本経済は恩恵をほとんど得られないことを意味します。

  今の日本が起業家にとって魅力的ではないのは火を見るよりも明らかです。

  首相が『株主資本主義』を否定しているのですから、『起業家の経営方針を決定する自由』が阻害されていることは自明です。資本を出さない立場の人物が経営に “介入” して来る可能性がある国は「リスクが高い」と判断されることでしょう。



  『起業家精神を育成する教育』は重要ではありません。なぜなら、日本以外で『起業家精神を育成する教育』を受けた有能な人材に日本で起業させる仕組みを確立した方が有益だからです。

  企業のトップが日本人でも外国人でも日本国内に本社を置く企業への法人税率は変わりません。「日本で優良企業が誕生するための経済環境作り」に政府は本腰を入れるべきなのではないでしょうか。