公明党・伊佐進一議員、「医療費がかかる新型コロナの5類への変更は反対」と『利権の温存』を要求

  公明党の伊佐進一議員(大阪6区)が「新型コロナの5類への分類変更」に反対の姿勢をツイッター上で示しています。複数の根拠を挙げているものの、いずれも雑な主張であることは否定できません。

  伊佐議員は「厚労委理事」と自身の bio に記載してますが、科学的根拠に基づく判断ができてないのは伊佐議員自身と言わざるを得ないでしょう。


『変異株』も伊佐議員にとっては「同じ敵」?

  伊佐議員のツイートで最初に引っかかるのは冒頭の「同じ敵」という部分でしょう。

  該当のツイートは大阪市の松井市長が「新型コロナの分類を5類に」と発言したことに対し、「ラベルの貼り替えに該当する行為で無意味」と批判する内容です。しかし、認識不足であることは否めません。

  なぜなら、『変異株』では状況が大きく異なるからです。

大阪府の80歳超における新型コロナ感染状況

  大阪府の80歳超はアルファ株による感染拡大が深刻だった昨春と同等の新規陽性者数が報告されています。しかし、死者は昨夏のデルタ株による感染初期と同程度に留まっているのです。(2022年1月9日から15日の1週間で死者2名)

  ちなみに昨夏(2021年7月25日)の時点で大阪府の65歳以上は約 75% がワクチン2回目接種を終えていました。

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  今は『ブースター接種』を高齢者に推奨しているのですから、「ワクチンの接種効果はない」と認めているも同然です。その状況下でオミクロン株による感染拡大に見舞われた事実を無視してはならないでしょう。

  変異株の中でも重症度(や死者)は大きく違うのです。“毒性がデルタ株よりも下がったと報告されるオミクロン株” で『従来株』や『(アルファ株のような過去の)変異株』と同じ対応を求めることは誤りと言わざるを得ません。


5類への分類変更で「患者の自己負担は増える」が、それでも負担の重さは季節性インフルと変わらない

  次に、伊佐議員は「5類に分類変更をする医療費が無料ではなくなる」と主張していますが、これは患者の自己負担分のことを言っているに過ぎません。要するに、患者の窓口負担がなくなるだけ実際の医療費は税金や保険料の形で拠出されているのです。

  厚生労働委員会の理事である伊佐議員は『国民医療費の構造(PDF)』を認識していることでしょう。

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  日本の国民医療費に年間で約45兆円が使われていますが、患者の自己負担分は全体の 10% 強です。これは「1割負担で済む後期高齢者」や「高額療養費制度」が負担分への上限になっているからです。

  それに季節性インフルエンザの治療費は「保険適用分の自己負担」が必要になります。“オミクロン株のように弱毒化した新型コロナ” の毒性が季節性インフルエンザと変わらない水準なら、患者への負担を同様に変更するのは妥当なことです。

  現状の『1類以上』で対応した場合に恩恵が最大となるのは「自己負担なしで入院できる患者(=主に高齢者)」と「対策費の名目で多額の補助金を得ている医療機関」です。

  この利権構造を温存することは「納税者である一般庶民にとってメリットがない」と伊佐議員は自覚しなければなりません。


治療薬や新型コロナワクチンの費用対効果を示してから「科学的根拠」を語るべき

  また、伊佐議員は「新型コロナの治療薬やワクチンも自己負担になる」と脅していますが、費用対効果を示せない治療薬やワクチンが保険適用の対象にならないことは当然です。

  科学的根拠を振りかざしたいのであれば、最低でも QOLY に基づいて算出された費用対効果(PDF)を示すべきでしょう。

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  「『半年程度で効果が消えるワクチン』で質調整生存年がどれだけ増加したのか」を伊佐議員は示す責務があります。科学的根拠に基づく判断を下すなら、日本政府が行なっているコロナ対策は過剰です。

  欧米よりも1桁少ない感染者数で『欧米と同じ対策』を国民に求めることはナンセンスだからです。



  伊佐議員は「高齢者の余生を守るために現役世代や子供たちを犠牲にすることを是としている」という事実に目を向けるべきでしょう。もちろん、『シルバー民主主義』を優先する価値観はありますし、そのような言論を主張する権利もあります。

  ただ、厚労省や厚労省のアドバイザーが提唱する『新型コロナ対策』は科学的根拠に裏付けされていないものばかりです。それをデータから読み解く能力を備えていることが厚労委員会のメンバーに要求されているのではないでしょうか。