ワクチン接種歴の計上問題で後藤厚労大臣が「ブレークスルー感染の実態把握が目的で他意はない」と無理筋な弁明を試みる

  厚労省が『新型コロナワクチン接種歴不明者』を『ワクチン未接種者』に計上して新型コロナワクチンの接種効果を水増ししていた問題で後藤厚労大臣が記者会見で「現場の負担減のため」などと弁明したと NHK が報じています。

  この弁明はロジックが破綻していますし、支離滅裂と言わざるを得ません。

  『接種日を覚えていない新型コロナワクチン接種者』はワクチン接種歴を有しているのです。“ワクチン接種済の人物” を『未接種』として扱うことは「ブレークスルー感染の実態」を見えなくしますし、「他意があった」と見なさざるを得ないでしょう。


「現場の入力負担」と「入力後のデータ処理」は無関係

  6月7日に行われた記者会見で後藤厚労大臣は『接種歴不明者の取り扱い問題』に対し、以下の弁明を試みます。

  ワクチン接種歴を入力する欄は、当初、ワクチン接種者が非常に少なかったことから、医療機関や保健所などの現場の入力負担を少しでも軽減する観点から、接種歴を特に選択しない場合には、「未接種」という分類をしていたのはご指摘のとおりです。

  「現場の入力負担を軽減するため」と弁明していますが、問題になっているのは「現場から『(ワクチン接種歴が)未選択』または『(ワクチン接種日が)未入力』となっている新型コロナ陽性者が『未接種』として処理されたこと」なのです。

  認知症患者や意識混濁で救急搬送された患者からワクチン接種情報を聞き出すことは非現実的であるため、新型コロナワクチン接種歴が不明の患者は発生します。

  “ワクチン接種日の確認ができない患者” が出現することは想定内ですし、新型コロナ陽性者からワクチン接種歴を確認できなかった医療機関や保健所は批判の対象にはなり得ません。後藤厚労大臣の弁明は詭弁と言わざるを得ないでしょう。


「データの食い違いはデフォルト処理に起因するので問題とは認識していない」と開き直り

  後藤厚労大臣の弁明には記者から「質問に答えて下さい」と苦言を呈され、「厚労省が『未接種』のまま扱ってデータを公表して来たのは適切か」と再質問されました。

  データが食い違っていた扱い自身についてはこのデフォルトをどう扱うかという発表のことなので、特に問題があったとは考えておりません。

  後藤厚労大臣は「デフォルトをどう扱うかなので問題とは考えていない」と『感染研(の鈴木基氏)が報告した数値』と『厚労省が報告した数値』に食い違いが生じたことを正当化していますが、これも大問題です。

  • ワクチン接種
    1. ワクチン接種あり
      • ワクチン接種日
        1. 接種日の入力あり
        2. 入力なし(null値)
    2. ワクチン接種なし
    3. 未選択(null値)

  「デフォルト(ワクチン接種:未選択やワクチン接種日:未入力)をどのように処理するのか」という仕様を定めたのは厚労省です。

  なお、厚労省が定めた『ワクチン接種済』とは「ワクチン接種日まで確認できた患者(A-a)のみ」でした。それ以外は『未接種』として処理されてたのですから「特に問題があったとは考えていない」との後藤厚労大臣の認識は深刻です。


「ブレークスルー感染の人数を調べるもので他意はない」と支離滅裂な回答

  後藤厚労大臣は「実態に反映しないデータを発表し続けたのは意図的ではないか」との記者からの追及に対し、苦しい回答を強いられています。

  このデータ自身は元々、ブレイクスルー感染(ワクチン接種後の感染)の人数を調べるために集計したという目的で発表していたデータでありますから、そういうことから言いますと、目的はそういうデータとして発表しているということで、何か他意があるということではありません

  これほど支離滅裂な回答も珍しいでしょう。

  「ブレークスルー感染の人数を調べるためのデータ」と弁明していますが、ブレークスルー感染とは「ワクチン接種後に新型コロナに感染する(=陽性反応を示す)こと」を意味します。

  つまり『ワクチン接種日の未入力者』を『未接種者』として処理することは “御法度” です。しかし、厚労省はその不正に手を染めていました。

  また、厚労省は『不適切処理が行われたワクチン接種後の新型コロナ陽性者数』を用いてワクチン接種効果の宣伝材料に用いていたのです。後藤厚労大臣は「他意はない」を鵜呑みにする人はいないでしょう。


河野太郎氏の “甘言” をスルーしたことで政治生命に致命傷を負うことは回避

  後藤厚労大臣の対応は散々なものですが、それでも河野太郎氏よりはマシです。

  厚労省は5月11日に行われた第83回・新型コロナ感染対策アドバイザリーボードで「重大な変更」を施したことを発表資料(PDF)に注釈として加えることでデータ処理が不適切だったことを認めました。

  しかし、河野氏はその2日後に以下のツイートをしています。

  厚労省が「ワクチン接種歴のデータ処理が不適切で接種者の方が未接種者よりも新型コロナに感染しやすい数値が現れていた」と認めた2日後に河野氏は「ワクチンの利益はそのリスクを大きく上回る」とツイートしているのです。

  しかも「厚労大臣、仕事しれ」と追記する有様です。

  「ワクチン接種歴の有無による発表値がおかしい」との指摘は5月11日以前から出ており、弁解が不能になったことで厚労省が5月11日に認めざるを得なくなったことが実情です。

  『こびナビ』の “レク” を鵜呑みにした河野氏の要望を受け流した後藤厚労大臣は命拾いをしたと言えるでしょう。とは言え、データ分析力が備わっていないことは致命的です。これが海外のデータを鵜呑みにする根本的な原因なのではないでしょうか。