『マスク着用が求められる監視員付きツアー』が “地方に” インバウンドの恩恵をもたらすなら苦労はない

  岸田首相が6月5日に福島県郡山市で行われた会合で「円安は外国人観光客に追い風となり、インバウンドは地方を元気にする可能性がある」と述べたと時事通信が報じています。

  しかし、日本の地方経済がインバウンドによる恩恵を享受することは現状では起こり得ないでしょう。

  “北朝鮮のように添乗員が随行するツアー” に人気が出ることはありませんし、ツアー中は法的根拠のないマスク着用が要請されます。また、濃厚接触者に認定されると強制離脱となる恐れがあることも理由です。


国内外の富裕層に消費を促す観光資源が存在することが大前提

  岸田首相は5日に福島県内で行われた会合で以下のように呼びかけたと報じられています。

  首相は「インバウンド(訪日外国人旅行者)は地方を元気にする大きな可能性を持っている」と強調。「福島においてもこうした動きを捉えて前進していただきたい」と呼び掛けた。

  0.1% でも地方を元気にする可能性があれば岸田首相の発言は嘘にはなりません。しかし、インバウンドで経済が活性化するには「収益性」に目を向ける必要があります。

  そのために欠かせないのが「国内外の富裕層に “日本の観光資源” の消費を促せるか」でしょう。これはドイツの自動車メーカー BMW が「高級車シフト」で今年1〜3月期に増益を記録しているからです。

  薄利多売では「似た特性を持つ地方との差別化」が困難です。旅行先に選ばれる可能性は低くなる のですから、円安になったところで地方経済が潤う可能性は乏しいと言わざるを得ないでしょう。


“添乗員が随行するマスク着用ツアー” が人気にはならない

  インバウンドで地方経済を潤わせるには「収益性が高い(富裕層をメイン顧客に据えた)観光資源を活用すること」が必要不可欠です。しかし、現状は「外国人観光客にマスク着用を徹底させる」との指針を示す有様です。

  日本政府は「熱中症になる恐れがあるので屋外でのマスク着用は求めない」と表明しています。

  その一方、外国人旅行客にはマスク着用を(旅行会社の添乗員に)徹底させる方針を示しているのです。「従わなければツアー参加・継続を認めない可能性あり」と “脅し” をしていますが、その条件を飲んでまで日本旅行をする動機は生まれないでしょう。

  円安は今後も続くと予想されますし、外国人の自由が法的根拠なく制限される “今の” 日本が旅行先に選ばれることは望み薄です。

  この状況で地方経済がインバウンドで潤うなら、交付税に依存した地方財政から脱却する自治体があるはずです。成功例が存在しないことがすべてを物語っていると言えるでしょう。



  少々の円高であっても「日本へ旅行に行きたい」と思える観光資源と観光資源を最大限に活用する地元の組み合わせが重要なのです。「円安で外国人観光客(の数)が増えるので地方も潤うに違いない」と考えるのは安易と言わざるを得ません。