医師会の釜萢常任理事が分科会で「新型コロナがインフルと同等とのエビデンスはない」と『まん防』の違法適用を主張し、委員の大部分が付和雷同した事実が議事録で明かされる

  『まん延防止等重点措置』が特措法施行令に記された条件を満たさないまま適用されましたが、そのように政府分科会で強く提言した人物が日本医師会の釜萢敏常任理事であることが議事録で明らかになっています。

  事態が深刻なのは「『(違法行為に該当する)釜萢氏の主張』に分科会のメンバーの大部分が付和雷同をしたこと」でしょう。

  『まん防』の適用に反対したのは大竹文雄氏だけで、釜萢氏の主張に「法的な問題がある」との指摘も(次の分科会で)行われましたが具体的な対応はされていません。会長である尾身氏は「知らぬ存ぜぬ」で有耶無耶にしようとしており、これも問題視されるべきでしょう。


釜萢敏氏が基本的対処方針分科会で主張した内容

  新型コロナの法律上の分類を5類に変更することを求める声に対し、釜萢氏は1月25日に開催された第21回・基本的対処方針分科会で以下の主張を展開しています。(議事録: PDF

f:id:sqboe:20220217175128j:plain:w600

  釜萢氏は「新型コロナの肺炎発症率が季節性インフルエンザと同じになったエビデンスはない」と主張し、分科会のメンバーに共通認識として持つよう促しています。

  ここで問題となるのは「『まん防』を適用する条件を満たしていないこと」です。政府分科会はこの問題を無視して『まん防』の適用を決定したことは極めて問題と言わざるを得ないでしょう。


特措法施行令に違反する行為を容認した分科会

  釜萢氏の主張内容が問題となる理由は違法だからです。『まん延防止等重点措置』を実施すべき要件は新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令に記されているのですが、第5条三で以下の制限が設けられているのです。

  第五条の三 法第三十一条の四第一項の新型インフルエンザ等についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることとする。

  「新型コロナの感染拡大」を理由に『まん防』を適用するには「重篤症例の発生頻度が季節性インフルエンザより相当程度高いこと」が要件なのです。

  釜萢氏は「新型コロナによる重篤症例の発生頻度が季節性インフルと同程度とのエビデンスはない」と主張していますが、「新型コロナの重篤症例の発生頻度が高いまま」との根拠を示していません。これが問題なのです。

  理由は感染症法・第34条に「措置は必要最小限度でなければならない」と明記されているからです。

(必要な最小限度の措置)
第三十四条
 第二十六条の三から前条までの規定により実施される措置は、感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない。

  つまり、「新型コロナによる重篤症例の発生頻度が季節性インフルエンザよりも高い可能性がある」との理由で『まん防』を適用することは法律(=感染症法)に抵触する可能性が極めて高いのです。分科会の参加者がこれを黙認していることは深刻です。


第22回・基本的対処方針分科会で朝野和典氏が法的視点から問題を指摘

  釜萢氏が「新型コロナの法律上の分類変更に反対」を表明した分科会の後の2月3日に開催された第22回・基本的対処方針分科会で朝野和典氏が以下の指摘を行なっています。(議事録: PDF

f:id:sqboe:20220217175632j:plain:w600

  • 新型コロナはイングルエンザよりも致死率が相当高いとあるが、この疫学情報は1年半前のデータ
    → オミクロン株の現状にはそぐわない
  • 「疫学データの書き換え」と「法律との整合性を諮った」うえで『まん防』を適用すべき
  • 法律の専門家を分科会に外部有識者として入れることを提案

  「新型コロナの致死率が相当高い」と主張する根拠は『1年半前(=2020年上半期)のデータ』です。この数値を『まん防』を適用する根拠として扱うのは不適切でしょう。

  インフルエンザの致死率は「(定点観測で)年1000万人の患者(報告される)」と「(人口動態統計での)2000〜3000人の死者」から算出されたものです。致死率の比較をするなら、新型コロナも同じ算出方法を用いらなければなりません。

  “死因が新型コロナではない死者” を用いた致死率で対策を決めることは論外ですし、オミクロン株は過去の変異株より致死率が低下していることが世界各国から報告されているからです。


新型インフルエンザ等特措法の規定に基づき、政府対策本部を廃止しなければならない

  そもそも論で言うと、政府は『新型インフルエンザ等対策特別措置法』に基づき、政府対策本部を廃止しなければならないはずです。

(政府対策本部の廃止)
第二十一条
 政府対策本部は、第十五条第一項に規定する新型インフルエンザ等にかかった場合の病状の程度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合の病状の程度に比しておおむね同程度以下であることが明らかとなったとき、又は感染症法第四十四条の二第三項の規定による公表がされ、若しくは感染症法第六条第八項若しくは第五十三条第一項の政令が廃止されたときに、廃止されるものとする。

  『政府対策本部』は「新型インフルエンザ等(≒新型コロナ)に罹患した場合の病状が季節性インフルエンザよりも重い」から設置が可能なのです。

  そのため、新型コロナに罹患した場合の病状が「季節性インフルエンザと “概ね同程度以下” である」と明らかになった場合は対策本部を速やかに廃止しなければなりません。

  言い換えれば、『政府対策本部』を維持するためには「新型コロナに罹患した場合の病状が季節性インフルエンザよりも明らかに重い」と示し続けることが不可避なのです。これを政府・厚労省・専門家は怠っているのですから、役目は終わったも同然でしょう。



  政府の “基本的対処方針分科会” が提言した『オミクロン株への感染対策』の費用対効果を測定し、今後に活用しなければなりません。それにより、コロナ対策の応益負担を求める必要があるのではないでしょうか。