“法で定められた条件” を満たさないオミクロン株の感染拡大に『まん防』の適用を決定した政府と専門家

  1月19日付で首都圏など1都12県にも『まん延防止等重点措置』の適用が決定しました。ただ、この適用は “法で定められた条件” を満たしておらず、違法であることは明らかです。

  決定した政府の姿勢に問題があることは明らかですが、追従した分科会も同罪と言わざるを得ないでしょう。なぜなら、『まん防』は経済に悪影響を及ぼすだけで費用対効果はマイナスだからです。


オミクロン株の毒性では『まん延防止等重点措置』の条件を満たさない

  新型コロナは感染症法・第6条で「新型インフルエンザ等感染症」に分類されているため、新型インフルエンザ等対策特別措置法・第31条の四が『まん延防止等重点措置』の法的根拠になります。

  問題となるのは「特措法の施行令」です。なぜなら、第5条の三で以下のように定められているからです。

(新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態の要件)
第五条の三
 法第三十一条の四第一項の新型インフルエンザ等についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることとする。

  要するに、『まん延防止等重点措置』の適用は「新型コロナに罹患した場合に肺炎・多臓器不全・脳症など重篤である症例の発生頻度が季節性インフルエンザよりも相当程度高いこと」が条件になっているのです。

  新型コロナは初期の段階から「健康な若者や子供たちの健康リスクは季節性インフルエンザ未満」であり、オミクロン株では全年齢でもそうなりつつあります。

  したがって、『まん防』を適用する条件を満たしていないことは明らかと言わざるを得ないでしょう。


2021年11月に分科会が設定した「分類の基準」では『まん防』に値しない

  次に、2021年11月19日に開催された第18回・基本的対処方針分科会で採用された『分類の新基準(PDF)』に照らし合わせると『まん防』が適用するには時期尚早であることが否めません。

Lv医療提供体制求められる対策
4 最⼤確保病床数を超えた数の⼊院が必要な状況 国は災害医療的な対応。トリアージの実施も
3 一般医療を相当制限しないと必要なコロナ医療が不可 “強い対策” を講じる必要。ワクチン・検査パッケージの運用停止
~
  • 引き上げの目安
    • 『3週間後に必要とされる病床数』が『確保病床数』に達した場合
    • 病床利用率が 50% 超
    • 重症病床利用率が 50% 超
  • 引き下げの目安
    • 病床利用率 / 重症病床利用率: 50% 未満
    • 入院率:改善傾向
    • 中等症 / 重症者:減少傾向
    • 新規陽性者: 2週間ほど下降傾向が前提
2 段階的な病床増でコロナ医療の両立は可能 保健所の体制強化、レベル3で必要となる病床の確保
1 安定的に一般医療とコロナ医療の両立が可能
  • ワクチン接種
  • 医療提供体制の強化
  • 総合的な感染対策の継続
0 新規感染者ゼロ

  オミクロン株による感染拡大の現状は『レベル2』です。

  新規陽性者は増加しているものの、要入院患者は増えていません。「念のために入院させている」ために病床が埋まっているだけであり、対策を強化する正当な根拠がない状態なのです。

  “3週間後に必要となる病床数の予測” や “病床の使用率” が世間に対して逐次公表されていません。後者は随時公表が言及されていたものですし、年齢階級別の病床使用率は開示されるべきです。

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  2021年9月27日に行われた厚労省アドバイザリーボードでは「年齢階級別の中等症や重症の割合」が公表されていました。入院の対象となるべき中等症以上の患者は年齢が上がるほど割合が高くなっていることが示されているのです。

  元ネタは『HER-SYS データ(PDF)』です。現在のオミクロン株による感染拡大期でも毎週公表できるデータであり、その公表が止まっている実態は問題視されなければならないことでしょう。


昨夏(=2021年夏)の第5波の収束理由を説明できない専門家が推奨する『効果的な対策』は存在しない

  また、政府分科会の尾身茂会長から「オミクロン株の特徴に相応しい効果的な対策を早期に打つこと重要」との助言を受けたと読売新聞が報じています。

  首相はこの日、方針決定を前に新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長らと会談し、尾身氏から「オミクロン株の特徴にふさわしい効果的な対策を早期に打つことが対策の要諦だ」と助言を受けた。

  問題なのは「尾身氏に『効果的な対策』を助言する資格も能力もないこと」です。

  尾身氏などの専門家は第5波がピークだった2021年8月下旬に「感染が減少になる要素は何もない」と断言するも、新規陽性者数はその直後に減少へと転じました。

  尾身氏ら専門家が「何を見落としていたのかとの反省」も「修正した指標に基づく予測の訂正」もしていないのです。

  飲食店への規制が『効果的な対策』ではなかったことは東京都での新規陽性者の増減が根拠になります。にも関わらず、『同様の対策』を推奨している尾身氏らは「無能」と言わざるを得ないでしょう。


『レベル2』に該当する都道府県から『まん防』の要請があれば(感染症法を無視して)対応すると表明した岸田首相

  岸田首相の遵法精神が著しく低いことは今回の対応でも示されています。1月18日の記者会見で「重症者が少ない中で『まん防』を適用するのは?」との問いに以下のように返しているからです。

  今回、東京都も含めて、レベル分類でいきますと、レベル2に該当していると認識しています。
(中略)
  レベル2に該当した都道府県から、政府に対して要請があったならば、政府としてもしっかりそれに対応していく、こういったことです。

  感染症法では第34条「必要な最小限度のものでなければならない」と明記されているのです。『レベル2』の該当する状況で『レベル3』の制限を設けることは違法行為に該当します。

  安倍元首相や菅前首相がこのような対応をすれば、朝日新聞などが猛バッシングをしたことでしょう。しかし、岸田首相への(左派界隈からの)批判はほとんどありません。それだけ朝日新聞などが求める政策方針と合致しているからと考えられます。



  専門家は第5波が発生する前は『人流』を感染拡大の理由とするも辻褄が合わなかったことで『(繁華街での)夜間滞留人口』を理由としましたが、第4波以前の矛盾を指摘されて窮地に陥っていました。

  説明もせず沈黙を続けていた専門家が第6波の感染拡大期に今後は『人数』を持ち出したに過ぎません。根拠のない憶測を続ける人物を「専門家」として持て囃す限り、日本での『コロナ対策禍』は続いてしまうのではないでしょうか。