“第5波の収束理由を説明できない専門家” による「効果的な対策を早く打つ必要がある」との提言で動く岸田政権
政府が新型コロナ対策として広島・山口・沖縄の3県を対象に『蔓延防止等重点措置』の適用を決定したことが公表されています。
ただ、この対策は無意味なものとなるでしょう。2021年夏の “第5波が収束に向かった理由を説明できない尾身茂氏ら専門家” が提言する『効果的な対策』を岸田政権が早期に採ったものだからです。
新型コロナ対策本部を開催し、広島県、山口県、沖縄県に「まん延防止等重点措置」を適用し、期間を今月9日から31日までとすることを決定しました。 pic.twitter.com/8SdJqg8Vzl
— 首相官邸(災害・危機管理情報) (@Kantei_Saigai) 2022年1月7日
尾身氏がアドバイザリーボード提言し、分科会で承認した『効果的な対策』
オミクロン株の感染拡大に対し、日本政府が採ったのは『昨夏の第5波での対策』と同じものです。そう言える根拠は1月6日に開催された第66回・新型コロナ感染対策アドバイザリーボードに尾身氏が以下の資料(PDF)を提出しているからです。
尾身氏を始め、政府・分科会にも名を連ねる専門家が「なぜ効果的な対策を早く打つ必要があるのか?」との意見書を提出。その中で要望されている『効果的な対策』は以下のものでした。
- 感染から高齢者を守る
- 高齢者への追加接種の前倒し
- 高齢者施設や医療機関の従業員への定期的検査の再開
- 成人式を含む連休での『基本的な対策』の徹底
- イベントへは検査を受けて参加
- マスク着用や換気・三密回避など感染防止対策の継続と徹底
- 自治体による無症状者・軽症者・濃厚接触者に対する弾力的な対応
- 発症後10日経過で退院可とする
- 診療所・医師会・看護協会・薬剤師会のさらなる協力
- BCR(事業継続計画)実施の準備
- 欠勤者増加に伴う BCR を用いた業務の優先付け
- テレワークの推進
これらの対策が効果的でなかったことは2021年9月初旬に実証済みです。同年8月下旬にアドバイザリーボードのメンバーは「感染者数が減る要因はない」と断言したにも関わらず、現実社会では感染拡大は収束へと向かったからです。
また、アドバイザリーボードに参加する専門家は「第5波が(専門家の予測に反する形で)収束に向かった理由」を説明していません。『同じ対策』を提言する時点で「無能」と言わざるを得ないでしょう。
『尾身氏ら専門家が提言する新型コロナ対策』に含まれる問題点
尾身氏ら専門家が提言した『新型コロナ対策』には複数の問題点があります。それを指摘する声が出ていないことは懸念事項でしょう。具体的に指摘したいと思います。
1: 濃厚接触者を大量発生させて「事業継続が不能」となっては本末転倒
BCR は "Business Continuity Plan" の頭文字を取ったもので『事業継続計画』のことです。具体的には「自然災害・大火災・テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した際に事業資産の損害を最小限に留めるための計画」のことを指します。
オミクロン株の感染拡大で問題となっているのは「人員不足」です。
人員不足の原因が『新型コロナ罹患による諸症状』と『新型コロナ陽性反応または濃厚接触者認定』では対策の必要度が全く違って来ます。後者に該当する基準を決めたのは「尾身氏ら専門家」であり、それによって生じた損害の責任は負わなければならないでしょう。
「電力会社の社員が大量に濃厚接触者認定を受けたので発電所の運転ができず計画停電に踏み切らざるを得ない」という事態も起こり得るのです。
『オミクロン株の感染拡大』と『長時間の大規模停電』をどちらを許容すべきかの結論を出しておく必要があるはずです。
2: 『基本的な感染対策』が継続される中で第5波は発生し、そして収束した
次に、「マスク着用や換気・三密回避などの『基本的な感染対策』の継続」と要求していますが、昨年夏の第5波は『基本的な感染対策』が行われている中で発生し、専門家の予想に反する形で収束したのです。
『基本的な感染対策』に「感染拡大を抑制する効果」や「感染状況が収束に向かう効果」があると主張するなら、それをデータで示して第三者や世間からの “精査” を受けるべきです。
アドバイザリーボードの提案する『新型コロナ対策』は感染者数(= 新規陽性反応者数)とは無関係であることが示されてしまっているのです。『陽性者数』で対応を決めている現状を恥じなければならないでしょう。
また、『偽陽性』や『偽陰性』の問題を忘れて「イベント前には検査を」と呼びかけることも愚策です。「検査の目的を見誤っている」とバッシングされても文句は言えません。
3: 高齢者を守るために現役世代や将来世代が追加負担を強いられる
専門家は「高齢者を新型コロナの感染から守れ」と述べていますが、対策費を負担させられているのは “高齢者向けの社会保障費用を担っている現役世代” と “国債を償還する将来世代” です。
現在進行形で不利益を被っている現役・将来世代に追加で『新型コロナ対策費』を負担させようとしているのです。高齢者が保有する資産や利権には手を付けないのですから、シルバー・デモクラシーに基づく統治が行われていることと同じです。
それに『オミクロン株による感染拡大』は南アフリカやイギリス・ロンドンの例だと「1ヶ月弱で収束に向かう」のです。高齢者向けの追加接種を急ピッチで進めたところで、有意な統計差が出る前に感染は収束していることでしょう。
雑な提言をする専門家が重宝されている限り、残念なことではありますが日本での『コロナ対策禍』は続くことは不可避だと思われます。