『アドバイザリーボードに提出された阿南英明氏の予測』よりも『神奈川県の症例報告数』は急増していた

  1月6日に開催された厚労省・新型コロナ対策アドバイザリーボードに阿南英明氏が提出した『神奈川県での新型コロナ新規感染者の推移予測』は「イギリスでの感染拡大の速度をベースにしているため外れる(=もっと急速に広がる)」と過去記事で言及しました。

  阿南氏の予測は1月28日まででしたので、『予測』と『実測値』にどのぐらいの差が生じていたのかを確認することにしましょう。


『阿南氏の予測』と『神奈川県から報告された新規陽性者数』

  阿南氏が用いた予測モデルでは「1月後半に新規陽性者数が二次関数で増加する」との結果が示されていました。

  しかし、実際に神奈川県から報告された新規陽性者数は「一次関数での増加」に留まりました。ただ、1月中旬に記録した実効再生産数Rが『阿南氏の予測』を倍以上も上回る水準で推移し、その間に予想以上の新規陽性者数を発生しました。

  これが「最も大きな違い」になったと評価せざるを得ないでしょう。


「療養対象者が予想よりも早期に大量発生したこと」が問題

  『阿南氏の予測』で問題となるのは「陽性反応を示したことで療養対象になる人が想定よりも早期に大量発生したこと」です。

  『予測モデル』に近い新規陽性者の発生ペースなら、1月下旬までに療養対象者を収容する医療機関の調整を行う時間があるはずでした。ところが予想以上のペースで療養対象者が発生しては “パンク” が現実味を帯びてしまいます。

  すべての療養対象者が「要入院患者」ではありませんが、高齢者を中心に要入院患者が一定割合で発生することは避けようがありません。

  医療費が公費負担であれば「早い者勝ち」になる傾向があり、医療による介入を受けるべき患者が手遅れになる事態が生じてしまいます。それを防ぐためにも『実態に合わない予測モデル』は参考程度に留めるべきでしょう。



  阿南氏は『京都大学の古瀬氏が作成したツール』を用いて新規陽性者数の発生数を予測したはずですが、「オミクロン株のピークアウト」に言及できていない時点で対策に用いる根拠としては弱すぎます。

  「何もしなければ R=2.5 で感染拡大し、最大で42万人が死亡する」との予測を出した西浦氏と同じことをしているからです。「南アフリカでは約1ヶ月でピークアウトした」という事実を反映していない予測では世間に聞く耳を持ってもらえないでしょう。

  『先行例』があるのですから、それを踏まえた予測を立てることができなければ専門家の信頼は失われる一方です。専門家として第6波の反省をする際に「予測の精度」も項目に入れるべきではないでしょうか。