平均世代時間が「5日」と「2日」では『実効再生産数R』にどのぐらいの差が現れるのか

  オミクロン株による感染拡大では「平均世代時間がデルタ株の半分ほど」との主張がなされており、これが実効再生産数Rに影響を与えています。

  世代時間とは「細菌の分裂・増殖において “1回の分裂・増殖” に必要とされる時間」のことです。デルタ株などの平均世代時間は「5日」でしたが、オミクロン株では「2日」が有力視されている状況です。

  それでは平均世代時間が短くなると『実効再生産数R』にどのぐらい変化が生じるのかを確認することにしましょう。


実効再生産数Rの求め方

  実効再生産数Rを求める際に用いられる計算式(簡易版)は以下のものです。

【R】=(【直近7日間の新規陽性者数】/【その前の7日間の新規陽性者数】)^(【平均世代時間】/【報告間隔】)

  この計算式を基に東京都から報告された新規陽性者数から1月27日の実効再生産数Rを計算すると下表のようになります。

表: 2022年1月27日の東京都の実効再生産数R





Day 1 96994051
Day 2 112274561
Day 3 94684172
Day 4 85033719
Day 5 128135185
Day 6 140867377
Day 7 165388638
合計 82334 …(A)37703 …(B)
(tmp) = (A) / (B) tmp = 2.184
平均世代時間: gen gen = 5日(旧)
gen = 2日(新)
報告間隔: time time = 7日
R = (tmp) ^ (gen / time) R = (2.184) ^ (5 / 7) = 1.75
R = (2.184) ^ (2 / 7) = 1.25

  平均世代時間を「5日」から「2日」に縮めると、実効再生産数Rの変動幅が小さくなることが分かります。それでは主な都府県での実効再生産数Rにどのぐらいの差が生じているのかを確認しましょう。


主な都府県での比較

沖縄県

  沖縄県では【平均世代時間=5日】とした場合の『実効再生産数R』は1月9日に 10.20 のピークを記録しました。ただ、【平均世代時間=2日】として計算すると R=2.53 にまで下がります。

  Rの数値は「上昇中の局面では大きければ大きいほど煽りやすい」との特徴があります。しかし、減少中の局面では「数値の下がり幅が大きいと煽りにくい」という問題が生じることになります。

  だから、実効再生産数Rの変動幅を小さくすることで「Rが横ばい(≒新規陽性者が減っていない)」と煽りたいのでしょう。


東京都

  東京都でも実効再生産数Rのピークは沖縄県と同じ1月9日でした。

  ただ、新規陽性者数の増加ペースを示すRの値は R=5.07 と沖縄県の半分に留まっています。(世代平均時間が2日だと R=1.91 となる)

  そのため、1月20日に新規陽性者数が減少に転じた沖縄県とは対称的に東京都(や大阪府)では「新規陽性者の増加がまだ続く状況」となっています。ただ、増加のペースは落ちていることから2月初旬にピークアウトをすることでしょう。

  大曲貴夫氏は「都の新規陽性者は1週間後に2万4000人」と主張していますが、新規陽性者の増加ペースが鈍化している現状では「過剰な見積もり」であり、社会に害を生じさせる悪質な煽りと言わざるを得ないでしょう。


大阪府

  大阪府での実効再生産数Rのピークも沖縄や東京と同じ1月9日でした。世代平均時間が5日の場合で R=4.78、世代平均時間が2日の場合では R=1.87 と算出されます。

  1月9日以降の実効再生産数Rは減少を続けており、減少ペースは東京都と同等のペースです。実効再生産数Rのピーク値は大阪府の方が東京都よりも低かったため、R<1 となるのは大阪府の方が早くなると予想されます。



  余談となりますが、「感染拡大を抑える」との目的で東京都には『まん防』が大阪府よりも約1週間早く適用されたものの「東京都と大阪府の “新規陽性者の発生ペース” に差が生じていない」のです。

  「『まん防』が適用された後の東京都の実効再生産数R」が「大阪府の実効再生産数R」よりも大きく減少していれば「『まん防』の効果」と言えたことでしょう。

  しかし、そうはなっていないのです。同じ失敗を繰り返している専門家と政治家は「修正能力が欠如している」のです。対策の間違いを認めることができない・認めようとしない専門家や政治家には責任を取らせなければならないのではないでしょうか。