ブロガー医 EARL 氏、全世界でインフルが消滅した事実を無視して「感染対策でインフルは桁違いに抑えられた」と主張

 ブロガー医としての活動も行なっている EARL 氏が「感染対策を行なったからインフルエンザの感染者数が数桁少ない」と主張するツイートを行なっています。

 しかし、このツイートは間違いです。

 なぜなら、2020年6月以降の1年強は全世界でインフルエンザが消滅状態にあったからです。感染対策は各国によってバラバラであり、EARL 氏の主張は根本的な部分で欠陥があると指摘せざるを得ないでしょう。

 

インフルエンザの感染者数は WHO が公表

 インフルエンザの感染者数を確認するには WHO が発表している数値を用いるべきでしょう。"Global Influenza Surveillance and Response System (GISRS)" に基づくツールがあるため、任意の国や地域での感染状況の確認が可能です。

北半球でのインフルエンザの感染状況
北半球でのインフルエンザの感染状況(2019年以降)

 北半球では冬季に該当する2020年1月・2月まではインフルエンザが報告されていたものの、その後は2021年11月頃までインフルエンザは消滅状態でした。

南半球でのインフルエンザの感染状況
南半球でのインフルエンザの感染状況(2019年以降)

 これは南半球でも同じです。2020年6月頃から2021年11月頃までインフルエンザが途絶えていたのです。南半球での冬季にあたる7月・8月にインフルエンザが流行しなかったのは異例と言えるでしょう。

 

インフルエンザの流行した国はあったが、オミクロン株に追いやられた

 その間にもインフルエンザの流行が起きていた国があったことは事実です。そして興味深いのは「オミクロン株の感染拡大が深刻になるとインフルエンザは消滅する “入れ違い” が起きていること」です。

アメリカ
アメリカでのインフルエンザの感染状況(2019年以降)
スウェーデン
スウェーデンでのインフルエンザの感染状況(2019年以降)

 欧米での代表例はアメリカとスウェーデンです。両国ともに2021年の年末にインフルエンザが急拡大するも年明けには急減。2022年1月末にはインフルエンザは消滅状態になっています。

インド
インドでのインフルエンザの感染状況(2019年以降)

 デルタ株が最初に確認されたインドは少し異なっていて、2021年の中旬からインフルエンザが流行しました。2019年の夏場よりも流行度は深刻であり、免疫負債が疑われる状況にあったと言えるでしょう。

 ただ、2021年の年末にはインフルエンザは消滅状態となり、2022年1月末ではオミクロン株による感染拡大が起きている状況にあります。

ブラジル
ブラジルでのインフルエンザの感染状況(2019年以降)

 最後に示したいのは南半球に位置するブラジルです。インフルエンザの発生傾向はアメリカやスウェーデンと同じなのですが、ブラジルは「コロナ対策?知るかボケ」と大統領が WHO に喧嘩を売っている国です。

 つまり、コロナ対策がゆるゆるな国の代表例がブラジルなのです。にも関わらず、インフルエンザの発生状況が(相応の対策を講じている)アメリカやスウェーデンなど欧米諸国と同じなのです。EARL 氏に主張は無理筋と言わざるを得ないでしょう。

 

該当4ヶ国での新型コロナの感染状況

 アメリカ・スウェーデン・インド、ブラジルでの新型コロナの新規陽性者数の推移は以下のとおりです。

 どの国においても2022年に入ってからオミクロン株による感染拡大が起きていることが確認できます。インフルエンザは『オミクロン株による感染拡大』と入れ違いで「消滅状態」へと戻ることになりました。

 手洗いやマスクなどの『感染対策』でインフルエンザが抑え込めるのなら、2021年の初夏に日本全国で感染拡大が発生した「RS ウイルス」に対する説明ができなくなってしまいます。

 「提唱した感染対策には効果があった」としたい立場の人物はいるのです。EARL 氏もその1人なのではないでしょうか。