在日アメリカ軍の最優先事項は「即応部隊としての機能維持」であって「部隊内でのゼロコロナ達成」は二の次

 日本国内でオミクロン株による新型コロナの感染拡大が発生している状況を受け、一部の政治家が「在日アメリカ軍の新型コロナ対策が緩いことが原因」と主張するツイートをしています。

 しかし、これは在日米軍が期待されている役割を理解していない主張です。『日本の政府当局が求めるゼロコロナ』を遂行する責務は在日アメリカ軍だけでなく、日本国民にもないという事実を認識すべきでしょう。

 

在日アメリカ軍の責務は「即応部隊としての機能維持」

 まず、在日アメリカ軍のプライオリティーは「(太平洋の西側に配置された)即応部隊としての機能維持」です。

 司令官は「部隊を即応可能な状態ですること」が日頃から要求され、『兵士の健康管理』や『兵器のメンテナンス』が原因で即応不能だと責任を問われる立場にあります。

 つまり、部隊内で感染症が蔓延して即応不能な状態に陥ってしまうと上官の責任問題になることは避けられません。それを回避するためにアメリカ軍では「ワクチン接種を拒否した兵士は除隊」という対応を採っているのです。

 一方で即応部隊に『ゼロコロナ』を達成するメリットはありません。なぜなら、無症状でも PCR 検査で陽性となれば『新型コロナ陽性反応者』としてカウントされ、戦線離脱を強いられる(= 即応能力が削がれる)ことになるからです。

 『新型コロナ罹患時の症状』で即応不能となるのではなく、『症状の有無に関係なく検査の結果』で “現場の戦力” が削がれる事態を招いてしまうことは本末転倒と言わざるを得ないでしょう。

 

「在日米軍から感染拡大」と批判するも、“ワクチン接種済みの在日米軍” とは言わない政治家たち

 「在日アメリカ軍からオミクロン株の感染拡大が広がった」と批判し、「アメリカ軍の兵士にも検査をしろ」との要求を行う政治家は与野党から確認できます。

長島昭久議員(自民党)

 即応部隊に『ゼロコロナ』を求める方が間違いです。新型コロナに罹患しても回復して任務に復帰できれば何の問題もないからです。認識を改めるべきは長島議員の方でしょう。

玉木雄一郎議員(国民民主党)

 日米安保は「日本がアメリカの軍事力にタダ乗りする形」です。どちらかの国が通告すれば、1年後には安全保障条約は失効します。

 米軍への感情悪化を煽るのは反基地運動に熱心な左翼界隈です。ここに “媚中派” も合流することでしょう。その代償は「有事の際の在外邦人を救出する手段の喪失」ですが、オミクロン株の感染拡大を理由に岸田政権は見捨てようとしました。

 今年は沖縄県知事選もありますから、リベラルを名乗る界隈から反米感情を煽る論調が多く流れることになると予想されます。

 

 「『ゼロコロナ』を最優先することが『国防』や『地域経済』よりも重要である」と主張するのであれば、主張している側がその根拠を示した上で費用を全額負担をしなければなりません。

 『社会保障の受益者である後期高齢者の余命を伸ばすことぐらいしか効果が見込めない新型コロナ対策』を納税者の追加負担で最優先項目にしてしまうと “ジリ貧” になるのは不可避でしょう。「後は野となれ山となれ」は迷惑極まりないことです。