『新型コロナ陽性者激減の理由』を説明できない厚労省アドバイザリーボードが「もう一段減らすべき」と主張

 10月20日に行われた厚労省アドバイザリーボードで座長を務める脇田隆字氏が「リバウンドが発生して新型コロナの感染者数が増えており、もう一段の減少を目指すべき」と述べたと朝日新聞が報じています。

 そもそも厚労省のアドバイザリーボードは『第5波が(脇田氏など専門家の予想に反する形で)急激に収束した理由』を説明できていないのです。「もう一段の減少を目指すべき」との曖昧な提言は全くの無価値と言わざるを得ないでしょう。

 

脇田隆字氏の発言内容

 朝日新聞が報じた脇田氏の発言内容は以下のものです。

 感染者1人が何人に感染を広げているかを示す「実効再生産数」は北海道と福岡県で推定値が1を超えた。感染の再拡大につながる可能性があり、座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は会見で「地域によってはリバウンドが発生して一時的に感染者が増える状況が出ている。もう一段の減少を目指すべきだ」と述べた。

 「もう一段の減少を目指すべき」と『ゼロコロナ思想』に基づく主張を展開することは自由です。しかし、脇田氏などアドバイザリーボードに参加するメンバーは “専門家” なのですから具体策の提示が必要不可欠です。

 ただ、厚労省のアドバイザリーボードは「第5波で感染者が激減した理由」を説明しなければなりません。

 専門家が『新規陽性者が減った理由』を説明できないのなら、世間一般が『新規陽性者を減らす効果的な対策』を採ることは不可能です。この点に関しては報道各社が専門家に「具体的にどうして欲しいのか?」と問いただすべきでしょう。

 

“煽りのデータ” を作成したは西浦博氏

 脇田氏の発言の根拠となるデータを示しているのは「8割おじさん」こと西浦博氏です。20日に行われた第56回のアドバイザリーボードでも自身が作成した資料(PDF)を配布しています。

北海道での新規陽性者数と実効再生算数の推移

 9月末と比較して10月上旬の新規陽性反応者が多いことは事実です。しかし、絶対数では「多くて数十名」なのです。リバウントと呼ぶには少なすぎます。

 ちなみに青森県では「『10名弱』だった新規陽性者数が『10名強』になった」ことで実効再生算数Rが1を上回っただけです。これもリバウンドとは呼べないでしょう。

青森県での新規陽性者数と実効再生算数の推移

 あと、報道によりますと福岡県でもリバウンドの兆候が見られるそうです。

福岡県での新規陽性者数と実効再生算数の推移

 新規陽性者数が『激減した後の横ばい状態』から『微増』したことで実効再生算数Rが1を上回る瞬間を切り取って「リバウンドが懸念」と表明しているのですから、専門家の評価を落とすだけの愚行と言わざるを得ません。

 

日本医師会の釜萢敏・常任理事が「厳しい状況が続くと強く匂わせるべき」と “今回も” 提言しているだろう

 9月1日に行われた第50回アドバイザリーボードでメンバーの1人である釜萢敏・日本医師会常任理事が以下の主張(PDF)をしている一幕があります。

釜萢氏が行なった発言内容

 新規陽性者数が(専門家の予想に反する形で)減少し始めたことを受け、日本医師会の釜萢常任理事が “アドバイザリーボードのメンバーの1人” として「医療は依然として厳しい」と強く匂わせるべきと主張しているのです。

 ただ、当時は『即応病床』として自治体に申請して補助金を受け取っていたにも関わらず新型コロナの患者を受け入れいない『幽霊病床』の存在が世間に知られつつありました。

 釜萢氏は “申請数の 70% ほどの入院患者数” で現場から「病床が逼迫している」との声が出ている状況で「詳細な調査をすべき」との提言はせずに「医療の状況は厳しい」と声高に主張しているのです。

 今回のアドバイザリーボードでも「リバウンドの懸念があると強く匂わせるべき」と訴えていたとしても不思議ではありません。専門家としての貢献度が極端に低い人物の提言が反映されることは問題と言わざるを得ないでしょう。

 

 そもそもアドバイザリーボードは8月中旬に「新規陽性者数が減る要素はない」と全会一致で断言しているのです。その総括すらできない専門家集団に政府のお墨付きを与える必要はありません。

 アドバイザリーボードを解散させ、科学的に証明されていない対策で生じた損害を(対策によって大きな利益を得た医療業界に)弁済させるべきなのではないでしょうか。