テレビ朝日、「飲み会やカラオケなどを控えたことが感染者急減の要因」との切り貼り報道で分科会の専門家に忖度

 テレビ朝日が「東京都で8月後半以降に感染者数が急減した理由は市民が高リスク行動を控えたことが要因になった可能性があると専門家会議で報告された」と報じています。

 ただ、この報道はアドバイザリーボードに提出された資料から切り貼りが行われたものです。分科会に参加している “感染症の専門家” のメンツを守るための忖度が行われた問題ある記事と言わざるを得ないでしょう。

 

テレビ朝日が報じた内容

 テレビ朝日が報じた記事の内容は以下のとおりです。

 東京都で8月の後半以降に感染者が減った理由は、天候やワクチンの効果だけでは説明しにくく、医療が逼迫したために市民が飲み会やカラオケなどリスクの高い行動を控えたことなどが大きな要因になった可能性があるとしています。

 現在は新規の感染者が少なくなり、病床の使用率も低いために市民がリスクの高い行動を控えることにつながらず、今後、感染者が増える恐れがあるとしています。

 「可能性がある」との文言を用いることで予防線を張っていますが、テレビ朝日の記事は元ネタの資料から “切り貼り” を行なっているのです。注釈を削除した状態で報じる姿勢は問題視されるべきでしょう。

 

アドバイザリーボードに提出された記事の内容

 テレビ朝日が用いた元ネタは11月9日に行われた第58回・新型コロナ対策アドバイザリーボードに仲田泰祐・東京大学准教授が提出した資料(PDF)です。

 その中で「医療逼迫による人々のリスク回避」があります。

医療逼迫による人々のリスク回避

 確かに8月下旬以降に飲み会やカラオケが減少している様子は読み取れます。しかし、減少した根拠が「飲み会やカラオケを行なったとのツイート」なのです。

 飲食店やカラオケ店の「来客数」や「売上高」ではなく、「(飲み会やカラオケに行ったという)ツイート」で判断しているのです。これは指標として疑問符が付くことになるのは当然です。

 しかも『まとめ』には以下の記述があります。

分析のまとめ

 「『医療逼迫によるリスク回避行動』の仮説は10月以降に感染減少が続いていることは説明しにくいことに留意」との注意書きがあるのです。この部分はテレビ朝日の記事では全く触れられていません。

 

 「ごく一部の限られた期間での新規陽性者数の減少」を説明できる可能性に触れているだけの資料を用いて『全期間における減少』の説明ができる見込みがあるかのような内容で報じることは報道機関として問題と言わざるを得ないでしょう。

 飲食店などを悪者にしておかなければならないのは尾身氏を始めとする “感染症の専門家” です。その専門家は「ノーマスク&3密の環境での会議」を実施しているのですから、専門家と同じ対応を採ることの問題はないと知っていて損はないはずです。