厚労省が9月8日のアドバイザリーボードで「(季節性要因を加味しない)ワクチン接種による死亡抑制の推定」を発表
9月8日に開催された第51回新型コロナ対策アドバイザリーボードで厚労省が「新型コロナワクチン等の効果の推定」を発表しています。
ただ、発表された内容は鵜呑みにすべきではないでしょう。なぜなら、死者数を推計するための致死率は『2021年1月から5月の数値』が用いられているからです。夏場での致死率は他の季節よりも低いことに留意する必要があります。
厚労省が発表した調査結果
厚生労働省が発表した「新型コロナワクチン等の効果の推定(PDF)」は9月8日に行われた第51回新型コロナ対策アドバイザリーボードで掲載されています。
ワクチン接種の効果は「2021年7月と8月に推定8000人の高齢者の死亡を抑制した可能性がある」と厚労省は見積もっています。この数値は『2021年1月〜5月の致死率』を適用した場合との差分から算出されたものです。
夏場は新型コロナによる致死率は低いため、その比較を怠った発表を鵜呑みにすべきではないと言えるでしょう。
昨夏に記録した新型コロナの致死率との比較がされていないことが問題
1: 新型コロナの致死率は夏場に低く、冬場は高い
厚労省が発表した『死亡抑制の推計』で問題視されるべきは「『致死率の高い冬場』と『今夏の数値』を比較していること」です。なぜなら、致死率は以下のように季節ごとに異なってるからです。
『死亡抑制の推計』で用いられた致死率を確認しますと70代では 4.5%。『2021年1月から5月までの致死率』としては妥当です。しかし、70代が記録した『2020年7月1日から9月30日までの致死率』は 3.81% でした。
この致死率は厚労省が『2020年7月2日に発表した資料(PDF)』と『同年10月1日に発表した資料(PDF)』で触れられている陽性者数と死者数から算出が可能です。ちなみに、40代以下の致死率は「昨夏と同様」です。
- 40代
- 2020年7月1日〜9月30日: 0.0343% (= 3/8738)
- 2021年6月30日〜9月1日: 0.0349% (= 38/108878)
- 30代
- 2020年7月1日〜9月30日: 0.0176% (= 2/11352)
- 2021年6月30日〜9月1日: 0.0143% (= 17/119219)
- 20代
- 2020年7月1日〜9月30日: 0.0051% (= 1/19433)
- 2021年6月30日〜9月1日: 0.0032% (= 6/190143)
新型コロナワクチン接種があまり進んでいない若い世代の致死率は昨夏と同様です。したがって、「デルタ株の毒性が強まった」との主張はデマであり、ワクチン接種で得られた効果を測定するには「昨夏との比較が適切」と判断すべきでしょう。
2: 2020年夏に記録された新型コロナの致死率との比較をした場合のワクチンによる死亡抑制効果の推計
昨夏に記録された致死率と比較するために必要な新規陽性者数の推計値は以下のように算出したとの記述があります。
- 【6月の推計値】=【5月の陽性者数(実数)】x 【0.37】
- 【7月の推計値】=【6月の推計値】x 【2.95】
- 【8月の推計値】=【7月の推計値】x 【各年代ごとの実際の増加率】
- 例: 90歳超だと【7月の推計値】x 【4.67】
- 【増加率】=【8月の陽性者数】÷【7月の陽性者数】
これを基に60歳以上を対象にした『ワクチン接種が進まなかった場合の新型コロナ陽性者数の推計値』を8月分まで求めると下表のようになります。
5月 【実数】 | 6月 【推計 - A】 | 7月 【推計 - B】 | 8月 【推計 - C】 |
|
---|---|---|---|---|
90歳超 | 2,550 | 944 | 2,783 | 13,002 |
80代 | 6,549 | 2,423 | 7,148 | 30,642 |
70代 | 10,053 | 3,720 | 10,973 | 43,803 |
65-69 | 5,633 | 2,084 | 6,148 | 23,331 |
60-64 | 6,689 | 2,475 | 7,301 | 23,687 |
上述の計算式で求めた『2021年7月および8月の推定陽性者数』に『2020年夏の新型コロナによる致死率』を乗算して求めた『推定死者数』と『2021年7月1日から9月2日までに報告された年齢階級別の死者数』を表にしたものが以下です。
陽性者数 【推定】 | 死者数 | 差 | ||
---|---|---|---|---|
推定 【致死率】 | 実数 | |||
80歳超 | 53,576 | 5,743 【10.72%】 | 512 | 5,231 |
70代 | 54,776 | 2,087 【3.81%】 | 196 | 1,891 |
60代 | 60,467 | 762 【1.26%】 | 127 | 635 |
こちらの場合では「新型コロナワクチン接種で死亡が抑制されたと考えられる70歳以上の高齢者は約7100人」です。厚労省の「推定8000人以上」とは 10% 強の違いがありますから、精査が必要との指摘の声は上がるべきでしょう。
『ワクチンの接種効果』が算出されたのであれば、費用対効果も俎上に載せなければなりません。
子宮頸がんを防ぐ『HPV ワクチン』は高校1年生頃までに “1回目の接種” をしないと公費負担の対象外となります。
大学生の年齢で接種を希望すると自費負担となる残酷な線引きがされているのですから、現役世代が費用負担を担っている高齢者への新型コロナワクチン接種も(一連の新型コロナ対策と)同様に査定される必要があるはずです。
「命が大事」との主張がまかり通っているから高齢者向けの社会保障費が膨張し続け、日本の財政は巨額赤字が積み重なっているのです。この現実を知っている人は少ないのではないでしょうか。