【イギリス】 オミクロン株による感染拡大で重症者が増えなかった事実を受け、マスク着用義務などの撤廃を表明

  イギリスのジョンソン首相が「マスク着用義務など新型コロナ対策の規制を撤廃・緩和する」と言及したことを日経新聞が取り上げています。

  オミクロン株による感染拡大では重症者が増えなかったことが理由です。オミクロン株での致死率はデルタ株よりも低いため、科学的根拠に基づく妥当な判断と言えるでしょう。


昨年末に導入した『新型コロナ対策』を撤廃するイギリス政府

  イギリスでは昨年末に『プランB』と呼ばれる新型コロナ対策が導入され、マスク着用義務やワクチンパスポートを用いた規制が行われていました。それらを撤廃するとジョンソン首相は表明したのです。

  英政府は2021年12月、オミクロン型の流行を受けて「プランB」と呼ばれる規制を導入した。在宅勤務を推奨したほか、公共交通機関や映画館などでマスク着用が義務付けられた。大規模イベントやナイトクラブなどではワクチン接種証明の確認も義務化した。今回、これらの規制を撤廃する。

  その根拠となっているのは「オミクロン株による感染拡大では重症者数が増えなかったこと」です。

  イギリスでの『集中治療室に入院中の患者(≒重症者)』は「昨夏から横ばい」です。オミクロン株による感染拡大があった中でも「横ばい」だったのですから、規制撤廃に動くことは科学的と言えるでしょう。


イギリスでの新型コロナによる死者は「陽性反応後28日以内に死亡した者」

  イギリスでの新型コロナの感染状況を確認すると、今年の年明けから『人口あたりの死者数』が増加していることに気づく人もいると思われます。ただ、イギリスから報告される『新型コロナによる死者数』には注意が必要です。

  なぜなら、死者の定義が "Deaths within 28 days of positive test" だからです。

  イギリスでは新型コロナの検査で陽性反応を示した人が28日以内に死亡した場合は『(死因に関係なく)新型コロナによる死者』として計上されます。交通事故でも、陰性後に別の疾病で死亡してもです。

  「新型コロナは多々ある死亡理由の1つ」として捉えていれば、『30日死亡率』のように “使える指標” になります。この認識の有無が日本政府との大きな差になっているのだと考えられます。


イギリスでの新型コロナによる死者数

  イギリスでの『新型コロナによる死者数』は2022年1月から「200人強」で推移しています。

  この水準はデルタ株よりも多いのですが、死者の定義が「陽性反応から28日以内に死亡した者」なのです。感染拡大で陽性者の絶対数が増えれば、新型コロナとは関係のない死者も計上されてしまうことになります。

  したがって、致死率(=陽性者に占める死者の割合)の推移も合わせて確認すべきでしょう。

デルタ株とオミクロン株での致死率の比較

  デルタ株の致死率は 0.3〜0.5% で推移していました。

  一方でオミクロン株による致死率は 0.25% 未満で、感染拡大期やピーク期は 0.1% を下回る水準です。感染が収束に向かい新規陽性者数が減少している現時点でも致死率は 0.25% 前後です。

  『デルタ株による感染拡大』を受け入れていたイギリスが『デルタ株の半分の致死率であることが明らかになったオミクロン株』との “共存” を選択するのは不思議ではありません。科学的根拠に基づく判断と言えるでしょう。

  日本政府も同じ政治的決断を下すことができるのかが今後の注目点になるのではないでしょうか。