厚労省アドバイザリーボードが「デルタ株の感染拡大による死者数増加の懸念」で煽るも第4波での被害には遠く至らず

  8月18日に第48回新型コロナ対策アドバイザリーボードが行われ、感染研の鈴木基氏が資料として『死亡者数のリアルタイム予測』を提出しています。

  それを受けて会見した脇田隆字氏が「死者数の増加」を懸念していますが、世間の行動が変わる可能性は低いでしょう。(デルタ株の感染拡大による)被害の想定は第4波よりも低く、今回の第5波は収束に向かう際に死者は「ある程度」は発生するからです。


感染研は8月23日までの1日あたりの死亡者は最大で43人に増えると推定した。脇田座長は会見で「今後さらに、死亡者数が増加することを懸念している」と述べた。

新規感染者9割以上がデルタ株と推定「死亡者増を懸念」、朝日新聞


元ネタの資料

  朝日新聞などが報道している記事の “元ネタ” は18日(水)に開催された『第48回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード』で国立感染症研究所の感染症疫学センター長を務める鈴木基氏が提出した資料(PDF)です。

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  その中に『死亡者数リアルタイム予測』があり、そこで言及されている数値を脇田氏が記者会見で言及。マスコミが記事にしたという流れです。

  ただ、この予測は『ベータ版』と見なすべきです。

  新型コロナによる死者の過半数は80歳以上ですから、まずは「80歳以上の新規陽性者数をどれだけ正確に予測できるか」で結果が大きく左右されることになります。

  病院や高齢者施設などでの起きた “たった1件” のクラスターで死者数は大きく上下動するからです。したがって、参考として使えるかは後期高齢者への感染状況を把握できるかにかかっていると言えるでしょう。


悲観論を流すのにはかなり無理がある

  脇田氏は「デルタ株の感染拡大による死者の増加」に懸念を示し、朝日新聞などはその見解に同調しています。しかし、その認識が世間一般に共感される可能性は低いと思われます。

  なぜなら、感染研(の鈴木氏)が18日に示した資料で触れられた予測値との乖離が発生しているからです。

  予測では「日本全国では1日平均で約30名が死亡」となっていますが、18日時点での7日間平均は「22.3人」と低い状況です。予測の的中には「今後1週間に渡って1日30人強の死者が続くこと」が必要と言えるでしょう。

  これは東京も同様です。東京では「1日平均6名の死亡」が予測されているものの18日時点では「4.4人」です。

  ただ、東京の場合は『報告日別の死者数』と『死亡日別の死者数』に大きな乖離があります。「7月中に死亡した人(や場合によっては6月に亡くなった人)が報告・計上されている」ため、どのデータを参照しているかの確認は不可欠です。


3回目のワクチン接種を実施中のイスラエルと日本の新型コロナによる死者数は同水準

  また、ワクチン接種先進国であるイスラエルの実情と比較すると日本で悲観論を口にすると失笑されるでしょう。人口が約925万人のイスラエルと約1億2000万人の日本の新型コロナによる死者数が(絶対値で)同水準だからです。

  人口比を合わせると、イスラエルでの新型コロナによる死者数は「日本の10倍以上」となります。

  国民の大多数が2回のワクチン接種を終え、大急ぎで3回目のワクチン接種を進めている国と新型コロナによる死者数が同じなのです。この現実を加味した新型コロナ対策を採ってないのですから、専門家が何を言おうと無視する人が世間で増えるのは受け入れなければなりません。

  それに感染研による『死者数のリアルタイム予測』で言及されている数値は第3波や第4波よりも低い水準です。

8月17日の1日あたりの死亡者数は厚労省の資料によると36人。第3波のピークは100人超、第4波のピークは200人超だった。

  新型コロナによる死者の大部分が80歳以上ですし、日本は2020年に総死者数が予想値を大きく下回る過少死亡が発生したことを忘れてはなりません。過少死亡分の約3万人は今年以降に追加されるため、その点を留意した分析が必要となるでしょう。