厚労省のアドバイザリーボード、『水増しした死者数』を用いて「オミクロン株の致死率はインフルよりも高い」と主張

  3月2日に開催されたアドバイザリーボードに専門家の有志が「オミクロン株と季節性インフルエンザとの比較」を提出したと毎日新聞が報じています。

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  「新型コロナ(=オミクロン株)の致死率は依然として季節性インフルエンザよりも高い」と主張していますが、この主張には欠陥があります。なぜなら、オミクロン株による死者数は “水増し” されたものだからです。

  『コロナ以外の死因』を除いた新型コロナによる致死率は「季節性インフルエンザと同程度の 0.08% ほど」になるのです。この事実を無視する専門家に存在価値はないと言わざるを得ないでしょう。


アドバイザリーボードのメンバーによる見解の内容

  毎日新聞が「専門家有志による分析」と記述する見解は3月2日に開催された第74回・新型コロナ対策アドバイザリーボードで押谷氏が提出した資料 3-1 (PDF)の後半に添付されているものです。

  • 季節性インフルエンザの症例致命率(CFR):
    1. 症例致命率(CFR)= 0.006〜0.018%
      • 分子: 2013年から2017年の人口動態統計における狭義のインフルエンザ死亡数
      • 分母: 定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数に基づく推計患者数
    2. 症例致命率(CFR)= 0.010〜0.052%
      • 分子: 2018/19 シーズンのインフルエンザ関連超過死亡数
      • 分母: 推計患者数
    3. 症例致命率(CFR): 0.09%
      • 分子: 受診後28日以内に死亡した数
      • 分母: 2017年9月から2020年8月の3年間に季節性インフルエンザで医療機関を受診した患者数(NDB参照)
  • 新型コロナウイルス感染症の症例致命率(CFR):
    • オミクロン株
      • 症例致命率(CFR):0.13%
      • 分子: 2022年1月1日から2月21日までの累積死亡者数
      • 分母: 同期間の累積陽性者数
    • 累計
      • 症例致命率(CFR):4.25%
      • 分子: 2020年1月から2021年10月までの累積超過死亡数
      • 分母: 同期間の累積陽性者数

  上記を根拠に「オミクロン株による致死率は季節性インフルエンザよりも高い」と主張していますが、この主張は誤りです。理由はオミクロン株による症例致死率を算出する際に用いられた分子の値が水増しされているからです。


死因が「新型コロナ以外の死者」を含む『オミクロン株による死者数」

  まず、厚労省が発表している「新型コロナによる死者数」には「新型コロナ以外の理由で死亡した人もカウント」されています。これは厚労省が「新型コロナ陽性反応時の死者は厳密な死因に関係なく報告を」と通知しているからです。

  その結果、アドバイザリーボードに大阪府から提出された資料(PDF)にあるように「新型コロナが直接的な死因は約6割」との報告が全国各地から行われることになるのです。

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  つまり、オミクロン株による症例致死率は「分子に用いられている死者数が1.5〜2倍ほど水増し」されているのです。したがって、オミクロン株による “実際の” 症例致死率は 0.13% の6割前後となります。

  その数値(= 0.078%)は季節性インフルエンザの症例致死率(= 0.09%)よりも低いのです。この事実を無視して「オミクロン株の致死率はインフルよりも高い」と結論ありきで進めるのは極めて問題と言わざるを得ません。


NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)に記されている季節性インフルエンザの死者と重症者数

  ちなみに、NDB とは『レセプト情報・特定健診等情報データベース』のことです。NDB で報告されている数値は3月2日のアドバイザリーボードに資料 3-10 (PDF)として提出されており、具体的な数値を確認することは可能です。

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  季節性インフルエンザは2017年9月から2020年8月までの3年間の累計で死者2万7679人重症者2万4805人と報告されています。

  ここでポイントとなるのは『年齢階級別の致死率および重症化率』でしょう。これも同期間で報告された実数値の言及があります。

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  季節性インフルエンザでは10歳未満の子供は年700人が重症化しており、10代では年間に200人が重症化していることが確認できます。しかし、新型コロナで子供たちの重症化事例は極めて稀です。

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  一方、「季節性インフルを患った際に ICU への搬送はない」とされる高齢者(=80代)では年間に2000人が重症化して手当を受けているのです。一部の医師の主張がは根拠を伴わない憶測である証拠が示されたと言えるでしょう。



  『まん防』を適用する条件を満たすのは「季節性インフルエンザと比較して重篤度が相当程度高い」と特措法施行令で定められているのです。オミクロン株ではこの条件を満たさないことは明らかです。

  また、アドバイザリーボードのメンバーは『新型コロナ対策によって失われたものの価値』との比較を怠ってることが極めて深刻な問題です。新型コロナ “だけ” を考え、経済や出生数の減少に目を向けない専門家の提言を鵜呑みにする政府の責任も重いのではないでしょうか。