【人口動態統計速報】 2021年9月の出生数は「前年と同数」も死亡数は「先月に続いて超過死亡が発生中」

  厚生労働省が人口動態統計速報の2021年9月分を発表していましたので内容を紹介いたします。

  2021年9月の出生数は速報値で7万5489人。前年同月より354人少なかったものの増減率は -0.5% でした。9月までの累計での増減率は -4.3% まで押し戻せたことはプラス材料と言えるでしょう。

  一方で死者数は11万5706人。これは『将来人口推計の高位』で予想された死者数を上回っており、この点に関してはネガティブに見るべきでしょう。


人口動態統計速報(2021年9月分)

  前年同月と比較した人口動態統計(速報)は下図のとおりです。

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  『9月の出生数』は「2020年9月の出生数とほぼ同数」でした。少子化で子供の絶対数が減り続けていることを考えると、速報値でポジティブな結果が報告されたことはプラスに見るべきでしょう。

  『今年1月から9月までの累計での出生数』は「前年比 -4.3%」と低い水準ですが、『8月までの累計出生数』は「前年比 -4.8%」でした。0.5ポイントの改善は歓迎すべきと言えるでしょう。

  一方で『9月の死亡数』は「2020年9月の死亡数より +7.7% で11万5700人」となりました。

  死者数は高齢者の絶対数に比例して増え続けることは想定内です。ただ、将来人口推計で予測された『死者数・高位』が続くことはアラートが鳴っていることと同義です。したがって、概数の発表など続報を用いた分析が必要になると考えられます。


出生数(2021年9月・人口動態統計速報)

  出生数は『将来人口推計』から算出した「中位」に近い数値が速報値では報告されています。ただ、確定値では数千人ほど低くなるでしょう。

  これは2020年9月の出生数が「速報値では7万5800人」でしたが「確定値では7万3100人」となっているからです。したがって、2021年9月の出生数は確定値では7万4000人前後に落ち着くことになると予想されます。

  出生数のネガティブ要素は先月も言及した「2021年1月の妊娠届が前年同月比で激減していること」です。

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  ほとんどの妊婦が妊娠届を提出することから、「今年の年末から来年の年始にかけて出生数が激減する可能性は残ったまま」と言わざるを得ないでしょう。


死者数(2021年9月・人口動態統計速報)

  死者数は先月・8月に続いて『将来人口推計・高位』の水準でした。前年の速報値では『将来人口推計・中位』とほぼ同数でしたから「状況は違っている」と言えるでしょう。

  ただ、高齢化が進行する日本では高齢者の絶対数が年々増加しているため、それに応じて死者数も前年よりも多くなるのは当たり前のことです。

  • 2021年1月〜9月までの推計死者数
    • 高位: 約112万3000人
    • 中位: 約106万4000人
    • 低位: 約100万7000人
  • 2021年1月〜9月までの死者数:約106万6000人
    • 1月〜6月(概数値): 約72万人
    • 7月〜9月(速報値): 約34万人6000人

  9月までの累計死者数は『推計死者数・中位』と同数です。2020年の年間死者数は「予想よりも約3万人少なかった」ため、“超過生存” をした高齢者が死亡することは想定されたことです。

  2021年の『推計死者数・中位』に『2020年の超過生存分』が上乗せされることは「自然の摂理」であり、高齢者を延命させるために「若者の自殺者数が増えている状況」は本末転倒であることを認識しなければならないでしょう。


「今夏に新型コロナによる超過死亡が起きた」との主張は通用しない

  9月も「8月に続けて超過死亡が起きた」ことを受け、「デルタ株の感染拡大で超過死亡が起きた」と騒ぐ人が現れることでしょう。しかし、その主張には無理があります。

  理由は『アルファ株による感染拡大が起きた5月前後に報告された新型コロナの死者数』の方が『デルタ株による感染拡大が起きた今夏に報告された新型コロナの死者数』よりも多いからです。

  しかし、総死者数での超過死亡は今夏の方が深刻です。

  これは「今夏は新型コロナ以外の理由による死者数で超過死亡が発生した」ことを意味しているのです。「新型コロナの感染拡大による医療崩壊」を理由にあげる医療関係者には(実際の利用率が5割だった)『幽霊病床』の “ブーメラン” が直撃することになるでしょう。