『欧米より少ない感染者数で逼迫する医療』に手を付けることは許さず、『個人の行動制限』の法整備を求める尾身茂氏

 尾身氏が8月17日に行われた基本的対処方針分科会の後に「個人の行動を制限する法整備をすべき」と報道陣に語ったと NHK などが報じています。

 欧米よりも1桁少ない感染者数で逼迫する医療体制や制度の改善には言及せず、『個人の行動制限』の法整備を要求することは論外でしょう。“医療業界の利権屋” として政治活動に励む人物の要求を聞き入れる意味は見当たらないはずです。

 

 分科会のメンバーの一致した見解として、個人についても感染リスクの高い行動を避けてもらえるよう、保障するようなことが可能になるような新たな法律の仕組みをつくることや、あるいは現行の法律で対応できるならその活用をお願いしたいと考えている。

分科会 尾身会長“一般の人々への行動制限の仕組みづくりを”

 

欧米の主要先進国より1桁少ない感染者数で医療逼迫?

 まず、日本の新型コロナ感染状況(=新規陽性者数)はアメリカやイギリスなど主要国と比較すると「10分の1程度」の低い水準にあります。

 主要先進国での『人口あたりの医療従事者数』はどの国も似たり寄ったりです。

 この状況下で日本国内で新型コロナの感染拡大による医療逼迫が起きるのであれば、「医療の責任が最も大きい」と言わざるを得ないでしょう。

 

日本の医療は「現役世代が支払った社会保険料と税金」で9割が賄われる補助金産業

 次に、日本の医療業界は特殊です。なぜなら、尾身氏ら専門家が目の敵にする(現役世代を中心とする)経済活動によって創出された富から支払われる社会保険料と税金が業界収入の 90% を占めるからです。

国民医療費の構造(平成30年度)

 平成30年度の『国民医療費の構造, PDF』を確認すると、患者負担は 11.8% です。

 「自己負担は3割」のはずですが実際の負担分は「1割程度」です。その理由は「窓口負担が1割で済む後期高齢者が医療費全体の約 40% を使っているから」です。

 つまり、現状の医療業界は『後期高齢者を対象にした診療行為』で報酬を稼ぐために人員が配置されていることを意味しているのです。新型コロナへの対応で人手不足が生じているなら、業界内で配分を見直すことが大前提と言えるでしょう。

 

病院がコロナ患者の受け入れに消極的で陽性者は原則入院なのだから医療逼迫は当たり前

 それに新型コロナの感染拡大による医療逼迫が生じた原因は「医療側」に存在します。その責任を問われたくないための保身で『個人の行動制限』を求めるなど論外です。

 医療業界は「『公的』な部分を担う」との建前があるから、業界収入全体の9割が補助金でも容認されて来たのです。しかし、コロナ禍での対応に関しては『民間病院』であることを理由に患者の受け入れを拒否

 それにより空床が発生していることが財務省の資料(PDF)にも示されています。

新型コロナと医療提供体制

 そのような対応をする民間病院からは『保険医療機関』の資格を剥奪すべきです。有事の際に責任を持って対応をすることを条件に「平時の独占」が容認されるのです。

 “有事に役立たない病院” は最初から存在しない方がマシです。諸外国と比較して格段に多い病院数を集約するためにも「働きぶり」をアピールできない病院は役目を終えるべきでしょう。

 それとは別に日本は「入院率が諸外国と比較して高すぎる」との指摘があります。

note.com

 陽性者は原則入院の日本での入院率は約 40%アメリカやイギリスでは 1% を下回っており、医療資源の活用に “何らかの問題” があることは否定できません。この部分にメスを入れるのが尾身氏ら専門家の責務であるはずです。

 

『個人の私権制限』よりも『医療機関と医療従事者の私権制限』が先

 尾身氏ら専門家は『個人の行動制限』を法整備するよう要望していますが、これは順序が逆です。なぜなら、医療業界の落ち度を世間一般に責任転嫁しようとしているからです。

 他の主要国より少ない感染者数で医療逼迫が起きるなら、その状況を招いた医療業界が責任を負わなければなりません。

 真っ先にすべきは『民間医療機関や医療従事者の私権制限』でしょう。「新型インフルエンザ等感染症に該当することを理由に受診を拒否しても罰則を受けることはない」が通用する時点で明らかに不公平です。

 医療業界は(医師会を経由する形で)「事業の独占」を要求したのですから業務の拒否は絶対にあってはならないことです。警察や消防では「許されていないこと」が医療では許されている現状が問題なのです。

 尾身氏ら専門家がこの点に触れないのは「医療業界の利権に世間の目が向くと都合が悪い」からでしょう。だから『個人への行動制限の法整備』を要求し、医療業界にメスを入れさせないようにしているのです。

 

 “補助金を受け取っていない一般的な民間企業が行う商行為” に注文を付ける暇があるなら、“補助金産業である医療業界でコロナ対応に消極的な医療機関” を現場に駆り立てる法整備を訴えるべきです。

 利権団体の代表者が専門家として業界への既得権益を維持するのために暴走しているのですから断罪しなければならないのではないでしょうか。