「5類に変更されたら新型コロナは診ない」と公言する医師が見当たらない時点で『懸念』は杞憂に終わる

  政府が新型コロナの感染症法における分類を5類に変更する方針を示したことに対し、一部の医師が「5類に変更されるとコロナ患者の診察・診療を拒否する医師や医療機関が出て医療逼迫が起きる恐れがある」との懸念を示しています。

  しかし、この懸念は杞憂に終わるでしょう。理由は「応召義務に反する」からです。

  メディアやネットで新型コロナの恐怖を煽る医師は頻繁に登場するにも関わらず、「5類に変更されたら私はコロナ患者を診ない」と公言する医師が全く見つからないのです。これがすべてでしょう。


「現場の声を聞け」と主張していた医師が『5類への分類変更後の “自身の” 診察方針』には口を閉ざす

  これまで医療業界は臨床や研究の双方から医師が「新型コロナの恐怖を懸念する主張」を展開し、新型コロナ対策を声高に要求して来ました。

  ただ、5類変更後の医療機関の方針は「 “現場が” 新型コロナ患者を診るか診ないのか」を示せば済むことです。しかし、コロナ患者を診ない医療機関が現れる懸念を示すだけで自分たちの対応方針には触れようとはしません。

  その理由は医師法で示された応召義務に反することを理解している医師が「沈黙」を選択することで世間が(医療業界にとって都合の良い結論に)流されることを期待しているのでしょう。


医師法第19条の応召義務に反することは割りに合わない

  医師には医師法第19条で応召義務が課されています。

第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

  ただし、専門外の分野にまで医師に応召義務を課すことはナンセンスです。そのため、厚労省は『応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方』を2019年の年末に通達(PDF)しています。

  ところが、この通達内容を正しく理解していないか意図的にミスリードを流している 医療関係者がいるのです。

  • 正しい法律解釈
    1. 医師は医師法第19条を根拠とする応召義務を負う
    2. 以下の正当な理由であれば、応召義務は免責される
      • 過去の迷惑行為
      • 医療費の不払い
      • 専門外の患者
      • 1類・2類感染症など特定の医療機関で対応すべきとされている感染症に罹患または罹患疑いの患者など
  • 一部の医師らによる誤った解釈
    1. どの患者を診察するかは医師の自由裁量
    2. 応召義務で医師は新型コロナ対応に駆り出されている

  新型コロナ罹患が疑われる発熱患者を “新型コロナの5類への分類変更後” に診察を拒否すれば応召義務違反です。応召義務違反に問われないのは「内科の看板を掲げていない医療機関」に限定されます。

  内科や発熱外来で働く医師や医療機関は “5類変更後の新型コロナ患者” への診察を拒否することはないでしょう。応召義務に反すると見なされた際のペナルティーが「割りに合わない」からです。


応召義務違反が騒ぎになると厚労省が該当する医師や医療機関の “パージ” に踏み切る

  医師が『 “5類変更後の新型コロナ” への罹患が疑われる患者』の診察を拒んだとしても、騒ぎにならなければ処分が下されることにはならないでしょう。

  しかし、マスコミが報じるような騒ぎになると「保険医(もしくは保険医療機関)の認定取り消し」などの処分は不可避です。

  日本の『国民皆保険制度』はフリーアクセスを建前に「現役世代の支払う保険料負担で高齢者に医療行為を施すことで医療業界が診療報酬を手にする『応能負担』」が採られています。これは厚労省が示す医療費の財源構成(PDF)からも明らかです。

  要するに「医療が必要となった時にいつでも受診可能だから所得収入がある現役世代が(割高な)保険料を負担すべき」との建前で『応能負担』を正当化しているのが実情なのです。

  応召義務を無視するのであれば、『応能負担による国民皆保険制度』の維持は困難になります。

  “保険料の給付申請の高い加入者” が相応の負担をする『応益負担による国民皆保険制度』では「受診頻度の多い高齢者の医療費を現役世代に肩代わりさせることは不可能」となるため、医療業界が減収に見舞われることは避けられません。

  理論的には「国が税金で後期高齢者医療制度の公費負担分を増やす」という選択肢は存在します。しかし、『毎年10兆円を後期高齢者の医療費に投じる予算案』を国会で通すことで得られるメリットよりデメリットの方が政治家には大きいので公費負担による補填も困難を極めるでしょう。



  上述した最悪の事態を避けるためには「応召義務違反をした医師や医療機関は保険医および保険医療機関の認定を取り消すことで誠意を示す」が最も効果的です。

  「5類に変更された新型コロナに罹患したことが疑われる患者の診察を拒否しても応召義務違反にはならない」と考えている医師がいるのなら、「5類変更後は診察しない」と現時点で宣言し、実際に診察拒否をした報告もすべきでしょう。

  どちらの見立てが正しいのかは歴史が証明してくれるはずです。