夏に参院選を控える岸田首相、感染症法の改正を見送ることで「一般国民」よりも「医師会」のために汗をかく

 フジテレビの『日曜報道』に出演した岸田首相が「6月までに課題を洗い出した上で法改正を考える」と発言し、感染症法の改正は実質的に見送られることになりました。

 これは『一般国民の権利』は制限され続ける一方で、『(新型コロナ患者の受け入れを拒む)医療機関の権利』は保護されることを意味します。「岸田首相の優先順位が如実に現れた決定」と言えるでしょう。

 

現行の感染症法が抱える問題

 新型コロナ対策の根拠となる感染症法が抱えている問題の根幹は第6条7項三号です。

(定義等)
第六条
 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。

  1. この法律において「新型インフルエンザ等感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
    1. 新型コロナウイルス感染症

 新型コロナは『新型インフルエンザ等感染症』に昨年の法改正で分類されたため、『指定感染症』どころか『一類感染症』をも上回る制限を設けることが可能な状況にあります。

 ここで問題となるのは医師法第19条医師は『応召義務』が課されているものの、「特定の医療機関で対応すべき感染症だから」との理由で診察を拒否できると厚労省の通達(PDF)でお墨付きを与えている点です。

画像:厚労省からの通達

 「自粛」を要求して国民の自由や権利を阻害しているにも関わらず、医療機関や医師のサボタージュは黙認されたた状態なのです。

 医療業界は業界収入の 90% が税金と保険料なのです。『国民の自由や権限』を制限するのは「医療機関の自由や権限が制限された後」でなければならないのです。

 

『今の法律や制度』の中でできるのは「経済を犠牲にして医療業界をさらに焼け太らせること」

 岸田首相は「今の法律や制度の中でできることは最大限やり尽くす」と説明していますが、『経済を犠牲にして医療業界を焼け太らせた対策』を加速することに意欲を燃やしたも同然です。

 『基本的な感染対策』や『自粛』を要請したことで経済は冷え込み、GDP はマイナスとなりました。一方で医療業界は『コロナ対策補助金』で潤い、バブルが到来しました。

 しかも、少子高齢化の日本で「高齢者の余命」を「現役世代や将来世代の追加負担」で守らせようとしているのです。その弊害が「若者の自殺者数増」や「出生数の減少ペースの加速」です。

 弊害には目を向けず、感染対策を徹底する意向を示したのですから岸田首相が期待しているのは「今夏の参院選に向けた医師会からの “返礼” 」でしょう。行動は「あからさまな選挙対策である」と物語っているからです。

 

法で定められた『最小限度の措置』を無視する岸田首相

 しかも、岸田首相の意思表明である「最大限やり尽くす」は感染症法第22条2項に反するものです。「やりすぎの方がマシ」との発言も同様です。

(最小限度の措置)
第二十二条の二
 第十六条の三から第二十一条までの規定により実施される措置は、感染症を公衆にまん延させるおそれ、感染症にかかった場合の病状の程度その他の事情に照らして、感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない。

 「措置は必要最小限度のものでなければならない」と法で明記されているにも関わらず、岸田首相は「最大限やり尽くす」と表明しているのです。立憲主義に基づく法治国家であるなら、“法律の専門家” が問題点を指摘すべきでしょう。

 重症者が(デルタ株と比較して)発生しにくいオミクロン株で医療が逼迫するなら、それは医療業界がリソースの配分を間違えたことが問題です。その尻拭いを『行動制限』の形で一般国民が強いられるのは起きてはならないことと言えるのではないでしょうか。