2023年年始時点で5300万回分の在庫が残るオミクロン株対応ワクチン、政府やメーカーが「接種の検討を」と啓蒙

  政府や製薬会社が接種を勧める『オミクロン株対応ワクチン』の在庫が2023年の年始時点で約5300万回分であることが厚労省の発表資料に記されていました。

  接種率が低調なままだと政府は「予算の無駄遣い」を批判され、製薬会社(や接種を行う医療従事者)は「守銭奴」などとの糾弾を受けることは避けられません。

  これが「ワクチン接種の検討を」などとテレビ CM を流す大きな理由でしょう。ただ、“季節性インフルエンザよりも脅威の低い新型コロナ” に対するワクチンを接種する現役世代は少ないと予想されます。


『オミクロン株対応ワクチン』は1人1回の接種

  オミクロン株対応ワクチンは『令和4年秋開始接種』の事業名称で行われており、「12歳以上」の年齢で「日本国内で初回接種(=2回目接種)を完了」していることを条件に1人1回かぎりの接種となっています。

  必要となるワクチンは2022年12月中旬の時点で “供給済” であり、接種回数を差し引くことで同年12月末の時点での在庫が約5300万回分であることが計算できます。

  ただ、現時点で在庫となっている『オミクロン株対応ワクチン』は半分近くが「廃棄」になる恐れがあります。これは若い世代を中心に新型コロナワクチンの接種率が落ち込んでいるからです。


そもそもの重症化率が低かった若者世代での接種率は低調

  30代以下での新型コロナによる重症化率は 0.01% を下回っていましたし、40代でも BA.5 による感染拡大が起きた2022年夏の第7波では重症化率は 0.01% を切る水準に低下しました。

  そうした要因から若い世代を中心に新型コロナワクチンの追加接種率が下がることは避けようがありません。(新型コロナワクチンの接種状況:首相官邸

  しかも、「新型コロナの重症化率や致死率はすべての年齢において季節性インフルエンザよりも低い」と2022年の年末に厚労省アドバイザリーボードも認めました。

  そのため、年明け1月6日の記者会見で加藤厚労相が「オミクロン株対応ワクチンを打っておられない方については積極的にご検討いただくことをお願いしたい」と言及したところで状況が変わる可能性は低いでしょう。


“立場の弱い学生” に接種を促す政府やファイザーの姿勢を容認してはならない

  絶対数で確認すると、20代から50代までの各年齢層で800万人強がオミクロン株対応ワクチンを『接種可能な状態であるものの未接種』です。

  これらの年齢層で「3200万回超の『オミクロン株対応ワクチン』を使用する前提」となっているため、在庫(≒5300万回分)の多くが廃棄されることは避けられない状況となっています。

  経済的にも自立している成人に『オミクロン株対応ワクチン』の接種を促しても無視されるだけでしょう。

  新型コロナの重症化率や致死率が季節性インフルエンザ未満となった現在ではインフルエンザワクチンを毎年接種していた人ぐらいしか行動に移さないと考えられるからです。

  だから、政府や製薬会社は “立場の弱い学生” に目を付けたのだと思われます。学校経由で「接種」を強く要請することが可能だからです。



  ファイザーは2023年の年始に「新型コロナの感染対策としてワクチン接種をご検討ください」と学生をターゲットにしたテレビ CM を出稿していましたが、“医療業界や製薬会社への思いやりワクチン” を接種する若者が多数派になることはないでしょう。

  在庫処分のために「新型コロナワクチンをきちんと接種しておくことがマナー」との “教育” に躍起になる不届き者が現れることは想定できるため、注意喚起をする意味はあると思われます。