厚労省アドバイザリーボードが「新型コロナとインフルエンザのリスク比較は困難」と発表し、コロナ対策の正当性を潰す

  新型コロナの法律(=感染症法)上の分類を変更するかに関し、12月14日に開催された厚労省のアドバイザリーボードの会合で専門家が「新型コロナと季節性インフルエンザのリスク比較は困難」との見解を示した朝日新聞が報じています。

  この見解は大問題と言わざるを得ません。

  新型コロナ対策を実施する根拠が「季節性インフルエンザに罹患した時よりも病状が重篤であること」と特措法で記されているからです。対策の正当性を損ねる主張をしたのであれば、対策会議の廃止も合わせて主張すべきでしょう。


第110回・厚労省アドバイザリーボードで発表された内容

  朝日新聞が記事にした専門家による評価は2022年12月14日に開催された第110回・新型コロナ感染対策アドバイザリーボードに資料(PDF)として報告されています。

  報告者は押谷仁・鈴木基・西浦博・脇田隆字の4氏。主張内容は以下のとおりです。

  • 致死率と重症化率で Covid19 と季節性インフルエンザを評価しているが、リスク評価として不十分
  • 新型コロナの伝播性は季節性インフルエンザを上回り、変異によって伝播性は増大
  • 冬季以外にも流行する新型コロナは別物

  政府から「新型コロナと季節性インフルエンザのリスク評価」に対する諮問を受けた専門家の答申は「(従来のリスク評価で自分たちが持ち出していた)致死率と重症化率によるリスク評価は不十分で比較できない」だったのです。

  新型コロナ対策による補助金バブルで潤う医療業界に属する専門家は「リスク評価が固まるまで現行の新型コロナ対策を継続すべき」と主張するでしょう。しかし、それは違法です。

  「従来のコロナ対策を継続する前提条件が満たされていること」を示すことができなかったのですから、専門家の答申に沿う形で新型コロナ対策に終止符を打つ必要があります。


『新型コロナ対策による制限』は必要最小限で “なければならない” と法に明記

  まず、新型コロナ対策は「必要最小限でなければならない」と特措法・第5条で明記されています。

  (基本的人権の尊重)
第五条
 国民の自由と権利が尊重されるべきことに鑑み、新型インフルエンザ等対策を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型インフルエンザ等対策を実施するため必要最小限のものでなければならない。

  また、新型コロナ対策が正当化されるのは「季節性インフルエンザよりも罹患時に重篤になると認められる場合のみ」です。これは特措法施行令・第5条の3で要件が記されています。

  当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることとする。

  同程度だと対策の法的根拠が失われるため、専門家は『採用したリスク評価指標』で「新型コロナに罹患した際のリスクは季節性インフルエンザよりも高い」と “常に” 示し続けなければなりません

  しかし、アドバイザリーボードの専門家は立証責務を果たすことはできませんでした。したがって、現状のコロナ対策を継続する行為は違法と判断される可能性は大いに存在するのです。


季節性インフルエンザは「冬季に1000万人の患者」を出し、夏場の沖縄でも流行する疾病

  まず、季節性インフルエンザは毎年約1000万人の患者が発生する感染力の強い疾病です。

  ただ、季節性インフルエンザの患者数は「冬場に発生した1つの波」によって報告数であり、「累計での患者数や死者数が取り上げられる新型コロナ」とは比較対象において注意が必要です。

  専門家は「年間を通して新型コロナの感染拡大が起きているので冬季のみにならないと季節性インフルエンザとの比較はできない」と主張していますが、この主張は通用しません。理由は沖縄県です。

  沖縄県は、冬季の流行期インフルエンザ以外にも、1年を通してインフルエンザの発生が認められ、夏季であっても外来、院内におけるインフルエンザへの対応に追われることも少なくなかった。

  沖縄は9月以降に『インフルエンザの流行入り(=定点あたりの報告数1)』を超える患者数が報告されることが常態化しており、2019年9月には真冬のピーク時に匹敵する報告数を記録しています。(数値は厚労省の発表値

  (注釈;下記の年をクリックすると当該年の折れ線グラフを非表示にできます)

  専門家が「季節性インフルエンザは冬季のみ」と声高に主張すればするほど、「夏でもインフルエンザが流行していた沖縄県の症例と比較しろ」との反論が威力を増すのです。

  アドバイザリーボードには沖縄県立中部病院・感染症内科の高山義浩氏も加わっており、「2019年9月のインフルエンザ大流行での対応」を専門家が高山氏に諮問していないのなら単なるサボタージュと言わざるを得ません。



  アドバイザリーボードに提言を出した専門家は「自分たち専門家が納得するリスク評価が確立するまでは(法律に違反していようと)現行の新型コロナ対策を継続せよ」が本音なのでしょう。

  コロナ対策が継続されるほど補助金で潤う立場にいる専門家の提言を鵜呑みにする必要はありません。新型コロナ対策による応益負担を求める “当たり前の政治判断” が必要なのではないでしょうか。