人口動態統計速報(2022年8月): 出生数は『推計・中位』に近い水準まで回復も、死者数が『推計・高位』を大きく上回る

  厚生労働省が人口動態統計・速報の2022年8月分を発表していましたので紹介いたします。

  2022年8月の出生数は速報値で7万4073人と前年同月より約1700人の減少(-2.3%)だったものの、『推計・中位』の出生数に近い数値だったことがポジティブな点です。

  一方、死者数は13万5649人でした。この数値は『推計・高位』よりも8000人ほど多い数値であり、この原因は “専門家が” 調査によって追求しなければならないでしょう。


出生数(2022年8月・人口動態統計速報)

  出生数は2022年7月まで『推計・低位』と変わらない水準で推移していましたが、8月は「『推計・低位』と『推計・中位』の間ぐらいの確定値に落ち着きそうな期待感を抱ける速報値」になっています。

  (2021年7月の出生数7.26万人の -2.3% だと7.1万人の出生が期待できる)

  しかし、深刻な少子化が続いていることに変わりありません。高齢者重視の福祉政策が転換しない限り、少子化に歯止めがかかることはないでしょう。


死者数(2022年8月・人口動態統計速報)

  2022年8月の人口動態統計・速報値での特筆点は「夏場の8月なのに死者数が年間のピーク期間である冬場と変わらない数値が報告された」ことです。

  • 2022年8月の死者数
    • 速報値: 13万5649人
    • 推計・高位:12万人
    • 推計・中位:11万4000人
    • 推計・低位:10万8000人

  「1ヶ月あたりの死者数が14万人弱」で推移した2022年1月から3月と同水準の死者数が “本来なら死者数が少ないはずの夏場” にも報告されたのです。この原因を探求することが専門家の責務であることは言うまでもないでしょう。


80歳以上の人口10万人あたりの死者数

  ただ、2022年8月に人口動態統計・速報値で報告された死者数が多かったところで勤労世代や子供世代には「どうでも良いこと」です。なぜなら、死者の 70% 超は80歳以上だからです。

  コロナ前は『人口10万人あたりの全死因による死者数』と『80歳以上の人口10万人あたりの老衰による死者数』は同じ曲線を描いていました。それが2021年夏以降に「乖離」が生じたままになっています。

  その一方で『80歳以上の人口10万人あたりの肺炎による死者数』は2019年以前と比較すると明らかに減少しました。

  80歳以上の死因を「肺炎」から「老衰」に付け替えたところで『今夏の記録的猛暑』で死者数が増えたとのシナリオはあり得ます。

  ただ、死者の年齢別の主な死因が公表される『人口動態統計・月報(概数)』の2022年8月分を待たなければ全体像は掴めないでしょう。現状では「可能性」を論じることしかできないと思われます。


参考: 80歳以上の人口10万人あたりの死者数(各年8月)