「マスク非着用者の乗車を拒否したバス会社」のために汗をかこうとする細野豪志議員

  マスク着用を了承しない乗客を降車させたバス会社に行政処分が下されたと読売新聞などが報じています。

  バス会社(PDF)は「バス停以外の場所で乗客を降車させたことが問題」と矮小化を図りたいのでしょうが、「バス停で当該客を降車させていたとしても問題」なのです。

  このことを棚にあげてバス会社の対応に理解を示す細野豪志議員の姿勢は問題と言わざるを得ないでしょう。


細野豪志議員のツイート

  本件に対する細野氏のツイートが以下です。

  細野氏は『コロナ対策』において複数の事実誤認があります。まず、鉄道やバス会社が耐えているのは『コロナ禍』ではなく『コロナ対策禍』です。

  また、公共の場でマスク着用を義務付ける法整備をする職責は細野氏などの政治家にあります。

  しかし、個人の自由を制限することになるため政治は消極的です。現場に「マスク着用の呼びかけ」を “要請” するだけですから、一線を越えた現場が現行法に基づき処分されるのは必然です。

  その行政処分を大目に見るよう圧力をかけようとする姿勢は批判されるのは必然でしょう。


伊豆箱根バスに行政処分が下された根拠

  伊豆箱根バスは「道路運送法第40条に基づく事業用自動車使用停止処分を受けた」と発表いたしました。

  第40条で示されているのは「許可の取消し等」です。行政処分を管轄官庁の長である国交大臣が出せると規定しており、同法で定められた違反行為があったことが処分の理由でしょう。

  具体的には第13条で規定されている『運送引受義務』の違反です。

  (運送引受義務)
第十三条
 一般旅客自動車運送事業者(一般貸切旅客自動車運送事業者を除く。次条において同じ。)は、次の場合を除いては、運送の引受けを拒絶してはならない。

   当該運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき。
   当該運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき。

  “マスク不着用の乗客” を拒める可能性があるとすれば、『道路運送法第13条の4』にある公序良俗に反するケースだけでしょう。その詳細は『旅客自動車運送事業運輸規則第13条』で記されています。

  (運送の引受け及び継続の拒絶)
第十三条
 一般乗合旅客自動車運送事業者又は一般乗用旅客自動車運送事業者は、次の各号のいずれかに掲げる者の運送の引受け又は継続を拒絶することができる。

   泥酔した者又は不潔な服装をした者等であつて、他の旅客の迷惑となるおそれのある者
   感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)に定める一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症(同法第七条の規定に基づき、政令で定めるところにより、同法第十九条又は第二十条の規定を準用するものに限る。)の患者(同法第八条(同法第七条において準用する場合を含む。)の規定により一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症又は指定感染症の患者とみなされる者を含む。)又は新感染症の所見がある者

  「新型コロナウイルス感染症の所見がある」と “バスの運転手” が判断できるのなら、マスク不着用だった乗客を途中降車させる法的根拠は存在します。

  しかし、その判断をするには医師免許が必要です。バスの乗客に医師免許保有者がいたとしても、検査機器が何もない街中での「所見あり」との判断は信憑性が疑われることになります。

  したがって、泥酔客でも不潔な服装をした者でもなかった乗客を途中下車させた行為は行政処分の対象となるのは避けられないのです。


乗客からの「法的義務のないマスク着用を強要された」との “苦情” を出されると国交省が窮地に追い込まれる

  ちなみに本件で伊豆箱根バスに行政処分が下された理由は「途中降車を強いられた乗客からの “苦情” があった」からです。

  旅客からの苦情は「 “適正化機関が” 処理をしなければならない」と『道路運送法第43条の3』で明記されています。『第43条の4』では「苦情の解決」が明記されており、相談内容によっては行政側が窮地に追い込まれるのは火を見るよりも明らかです。

  「法的義務のないマスク着用を強要されたことを拒むとバス停でもない場所で途中降車をさせられた」との “苦情” が入れば、行政は処分を下さざるを得ません。

  にも関わらず、細野議員は「現場のバス運転手が行った難しい判断で行政処分を下すのはおかしい」と批判しているのです。

  そもそも『法的義務のないマスク着用』を法的義務であるように誤認させたのは医療の専門家や政治家です。そのことを棚に上げて「不安に思っている人々に配慮すべき」と主張している時点で論外でしょう。



  細野議員は福島第一原発からの処理水の海洋放出を推進していますが、そのことを不安に思う人々への配慮(=海洋放出の見送り)には否定的です。原発対応とコロナ対策の双方で科学的根拠に基づく判断をするのは難しいのでしょう。

  結核病棟での医療行為で用いられるマスクの着用は「長くても30分ほど」です。1日に10回以上も着用するマスクを変えているのなら効果はある程度期待できますが、1日1枚ではアリバイ工作に過ぎません。

  “相手の顔が分からない生活” は人気アイドルグループのメンバーを見分けにくくなった中高年にとってはストレスではありません。しかし、繊細な違いが見分けられる若者や子供たちにとっては死活問題です。

  そのことを理解できない政治家が「若者の味方アピール」をすることは滑稽と言わざるを得ないのではないでしょうか。