斉藤国交相が「訪日観光需要は高い」と水際対策の正当化を図るも、2022年6月の外国人観光客は252名に留まる

  2022年6月から外国人観光客の受け入れが再開されたが、観光目的での入国者数は252名に留まったことが日本政府観光局(JNTO)の発表で明らかになったと日経新聞が報じています。

  (G7 などの)他国と比較して「出国前検査などが厳格すぎる」との批判が6月下旬の時点で報じられおり、それが現実になったと言えるでしょう。

  斉藤鉄夫・国交相などは「訪日観光の需要は高い」と記者会見で言及していましたが、ごく一部の “物好き” しか観光客として訪日しなかったのです。この事実を直視し、対策を講じなければインバウンド収入を得ることは困難と言わざるを得ないでしょう。


6月10日の記者会見で「訪日需要の高さを実感している」と言及した斉藤国交相

  「水際対策や感染対策が厳しかろうと訪日観光需要がある」との政府の立場を鮮明したのが斉藤国交相です。6月10日の記者会見で以下のように回答しているからです。

  先日来、観光庁や、日本政府観光局(JNTO)の海外事務所には、国内外から非常に多くの問い合わせをいただいており、訪日需要の高さを改めて感じているところです。
  国土交通省としては、今般の訪日観光再開が、地域経済の活性化等につながることに期待をしており、今後も感染拡大の防止と社会経済活動のバランスをとりながら、観光需要の回復にしっかり取り組んでいきたいと思います。

  斉藤国交相の期待値と実際の訪日観光客数にズレが生じた理由は「行政側の分析ミス」でしょう。

  政府は「観光客の受け入れ再開を発表すると問い合わせが増えた」ので「訪日需要はある」と判断しました。しかし、この考えは早とちりです。

  なぜなら、観光庁や JNTO に問い合わせるのは「どのような制約が設けられるのか」を知りたい旅行事業者であって、『監視員が随行するツアー』を購入する当事者ではないからです。

  “お役所仕事” が存分に発揮された事例と言わざるを得ないでしょう。


「際立つ日本の厳格さ」と批判されていた方針

  欧米では検査要件が撤廃されている状況で日本は『出国前検査』を義務付けるなど「厳格さが際立っている」と6月末に日経新聞が記事にしています。

  「手続きが煩雑なままでは日本旅行を敬遠させかねない」との懸念が記事の冒頭部に記載されていましたが、6月の訪日観光客数252名は「それが現実となった」と評されるべきものです。

  『監視員が随行する観光ツアー』は旅行客に自由がなく、人気が出ることはありません。しかも、法的な根拠のないマスク着用を強いられるストレスも加味されるのです。

  政府は「観光需要の回復に取り組む」と公言していますが、日本政府が実際に採っているのは「感染対策を優先した上での観光需要の創出」なのです。それが他国に知れ渡っているのですから、“訪日観光を見合わせる人” が続出するのは当然の結果と言わざるを得ないでしょう。



  コロナ対策費を捻出するために国債の大量発行などで『日本円の価値』を毀損し続けている状況が続く限り、円安は続くことになります。訪日旅行客によるインバウンドは外貨獲得手段の1つであり、それを逃す環境を保つ政府の方針は批判されるべきでしょう。