経産省が『節電』に続き『節ガス』を求める制度設計を開始

  経済産業省が『節電要請』を参考にした『節ガス要請』の制度設計に取り組んでいると日経新聞などが報じています。

  液化天然ガス(LNG)は火力発電や都市ガスが主たる使用方法です。節約を求めると「経済への悪影響」が弊害として生じることは避けられません

  (経産省が深く携わった)エネルギー政策の失態を『節約』で誤魔化そうとする姿勢は厳しく批判されるべきでしょう。


「需要を満たす供給体制の構築」がエネルギー政策の目的のはず

  経産省が検討している『節ガスの制度』は『節電要請』を参考にしたものであると日経新聞が記事にしています。

  経済産業省は液化天然ガス(LNG)の調達難に備え、都市ガスの消費を抑える「節ガス」を家庭や企業に求める仕組みをつくる。需給が逼迫する際には前もって大口企業に使用制限令を出せるようにする。ロシア産LNGの安定供給に懸念が生じていることに対応する。電力分野の節電要請を参考に制度設計する。

  ロシアが(日本が権益を持つ)サハリン2を接収したことで LNG の確保に不安が出ており、経産省が「需要を絞る要請」を出せるようにする制度設計に取り組んでいます。

  ただ、市場で正しいのは『供給』ではなく『需要』です。エネルギー需要を満たすだけの供給ができない『エネルギー政策』は「失敗」なのですから政府は対応を改める必要があるでしょう。


ロシア産 LNG の輸入量と輸入額

  ロシアから輸入している LNG の購入量と購入額は財務省の貿易統計で示されており、グラフ化すると以下のようになります。

  日本はロシアから毎月60万トンほどの LNG を輸入しており、これは全体の 10% ほどに該当します。

  「ウクライナ侵略」を理由にロシアへの経済制裁をしているのですから、LNG の確保に支障が生じるのは時間の問題です。このような事態への備えができていなかったことは由々しき事態と言わざるを得ないでしょう。


LNG の用途は「60% が発電」で「30% 強が都市ガス」

  なお、天然ガスの用途別消費量はエネルギー白書で言及されており、2021年度版では発電に 60% が用いられていることが報告されています。

  経産省は「LNG の確保不足による電力不足」への対策として『節ガス要請』を実施するための制度構築を本格化させていますが、都市ガスによる消費量は用途の 30% 強に過ぎません。

  『節ガス要請』で “お茶を濁す” よりも「カーボンニュートラルのためにベースロード電源として運転中の LNG 火力発電を原子力発電に置き換える」ことの方が LNG の消費量を抑えることができるはずです。

  まずは『原発の運転再開』を要請し、既存の電力インフラに “タダ乗り” を許して供給不足を引き起こす原因となっている再生可能エネの退出を促すことが経産省の役割なのではないでしょうか。