“立憲民主党に近い参院選の公約を掲げる公明党” と自民党・小野田紀美氏の対決姿勢が強まるのは必然

  産経新聞が参院・岡山選挙区で連立政権を組む自民党と公明党(の支持母体である創価学会)との間で対決姿勢が強まっていると報じています。

  その要因はいくつかの項目において、“立憲民主党と変わらない政治的立場を採る公明党” に小野田紀美氏が理解を示さず突っぱねたからでしょう。

  公明党は「経済を重視する」と主張していますが、公明党のエネルギー政策での立場は『脱原発・再エネの主力電源化』です。「喧嘩を売られる理由は存分にある」と言わざるを得ないでしょう。


新型コロナの法的分類を変更すべきか?

  どの項目で小野田紀美氏と公明党の立場が異なっているのかは NHK が発表している『候補者アンケート』から(小野田氏が所属する)自民党と公明党の差が大きく示されている質問事項を確認すると良いでしょう。

  1つ目は『新型コロナの法的分類』です。

  自民党は「新型コロナの法的分類を新型コロナに変えるべき」が多数派であり、小野田氏も「変えるべき」と回答しています。

  小野田氏は国会質問で「子供たちのために5類に変更すべきだ」と岸田首相を質していました。そのため、この主張は政治家・小野田紀美として譲れない点と言えるでしょう。

  その一方で公明党は「新型コロナの法的分類変更に関しては様子見」を貫いています。高齢の創価学会員からの突き上げを受けたくないですし、経済政策は公明党の “1丁目1番地” ではないからです。


憲法を改正し、自衛隊を明記することに賛成か?

  2つ目は「憲法改正」です。改正する箇所によっても賛否が割れると予想されますが、『自衛隊の明記』に関しても自民党と公明党の立場は異なります。

  自民党は 94% が「憲法を改正して自衛隊を明記すること」に賛成。小野田氏も賛成の立場を採っています。

  一方の公明党は「憲法改正そのものに反対」の姿勢を示しており、自衛隊を憲法に明記することにも 66% が「反対」の立場です。

  公明党の憲法改正に対する立場は立憲民主党などの野党に近いものがあります。他の政策でも一致している分野があるのですから、「『立憲公明党』として有権者に旗色を鮮明にした方が良い」とも言えるでしょう。


原子力発電への依存度を今後どうするか?

  3つ目は「原子力発電への依存度」です。エネルギー政策においても自民党と公明党は立場が違っていると示されています。

  自民党は現状維持が 35% でマジョリティー。小野田氏も「今のままで良い」と回答しています。自民党では「原発の依存度を高めるべき」が 30% を占めており、原発を主力電源の1つに含めているのでしょう。

  公明党は「原発依存度を下げるべき」との考えが 63% で多数派となっています。

  資源インフレによる経済失速が鮮明になっていることに加え、日本では電力不足にも見舞われています。この状況で『脱原発』を選挙公約に掲げている公明党は「あまりに無責任」と言わざるを得ません。


再エネの割合をどうすべきか?

  最後の4つ目は「電源構成に占める再生可能エネルギーの割合」です。この項目も自民党と公明党で差異が生じています。

  自民党は半数の 49% が「主力電源とすべき」と回答していますが、小野田氏は「今のままで良い」と回答しています。これは他の政治家との差別化を図ることになるでしょう。

  一方で公明党は 88% が「再生可能エネを主力電源とするべき」と回答しています。

  どのように考えるかは個人や組織の自由ですが、「今夏に問題となっている電力不足の原因の1つが『再生可能エネ』である」との認識を “選挙戦で経済重視を語る公明党” が欠いていることは問題です。

  (約1年前の)2021年7月16日に開催された第54回電力・ガス基本政策小委員会の制度検討作業部会に提出された資料(PDF)に「FIT 再エネ(実質0円)の増加で火力発電の市場価格が低下し、発電所の廃止を招いている」と指摘されているからです。

  公明党などが主張する『再生可能エネの主力電源化』を進めると “電力需要に対する調整能力を持つ火力発電所” が今よりも減少する結果を招くことになります。

  小野田氏がこの事実を知った上で『再エネの割合増加に反対』を示しているかは不透明ですが、『再エネが占める割合増加に賛成』をしている公明党の方針は電力不足を深刻にするだけです。



  どの項目を重要視するかは個々の政治家や有権者の自由です。新型コロナの法的分類、自衛隊の憲法明記、脱原発・再エネの主力電源化に対する “政治家として明確な意見” を持っているなら貫くべきでしょう。