小池都知事が「出口戦略の明示やコロナの法的扱いの見直しを」と岸田首相に要請し、参院選に向けた駆け引きを開始

  東京都の小池百合子知事が岸田首相と面会し、新型コロナ対策の出口戦略を明示することや新型コロナの法的扱いを見直すことを要望書として提出したと NHK など各メディアが報じています。

  感染対策を重視していた小池都知事が「経済に比重を移した」ことは世間の風向きが変わりつつある根拠なのでしょう。

  ただ、経済に比重を移した本音は「現状だと今年だけでなく “来年も” 年金支給額の引き下げが起きる可能性が高い状況だから」だと予想されます。高齢者からの反発を緩和するための動きと言えるでしょう。


2022年3月30日に小池都知事が岸田首相に要望した内容

  小池都知事は3月30日に岸田首相と会談し、新型コロナ対応への要望や状況の説明などを行なっています。

  • 都内では『(感染力がより高いとされる)BA.2』と呼ばれる系統のウイルスへの置き換わりが進行
  • 感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた出口戦略について検討を
  • 医療提供体制の維持や社会経済活動の継続などの観点から、法令に基づく措置の変更も含め必要な対応を行うこと

  「ウクライナ問題で発生した避難民の受け入れ実績」を参院選でのアピール材料の1つとして利用したい訳ですから、そのためにも日本経済に悪影響を及ぼす政策とは距離を取る必要があります。

  なぜなら、「納税者の圧倒的多数を占める日本人が不況に苦しむ状況でウクライナ人の生活保障に税金を投入することを惜しまない政治家」とのネガティブ・キャンペーンを展開される要因になるからです。

  また、経済の落ち込みが「政治家の重要な票田である高齢者の年金引き下げ」という悪影響も引き起こしたのです。これらが「経済活動にも比重を置かざるを得ない」との考えを小池都知事に芽生えさせたのでしょう。


『BA.2』への置き換わりは、感染対策との無関係

  小池都知事の岸田首相に対する「BA.2 への置き換わりが大変速いスピードで起きている」と説明は「新型コロナの波は『株の置き換わり』が原因で『感染対策は関係ない』」と主張したに等しいことです。

  東京都が掲載しているモニタリング会議の資料(PDF)から『BA.2』が占める割合は「2月末の時点で11.8%」、3月中旬(3月8日から14日の1週間)には 38.5% と2週間で急速に広がっていることが示されています。

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  しかも東京都では3月21日まで『まん延防止等重点措置』が適用されていましたが、“3月15日から21日までの1週間” で『BA.2』が占める割合は 52.3% と半分を超えているのです。

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  「『まん防』を解除したので感染再拡大が起きた」と主張する人は「『まん防』が適用中の東京都で BA.2 の占める割合が 50% 強にまで急拡大した理由」を科学的根拠に基づいて説明しなければならないはずです。

  現状は「専門家が提唱する感染対策に関係なく “新たな変異株” によって波が作られている」のです。したがって、経済に深刻な悪影響を及ぼしている新型コロナ対策は最小限に留めるべきと言わざるを得ないでしょう。


「(コロナ対策で)現役世代の賃金が下がった」ので「年金の支給額も引き下げ」となった

  小池都知事の変わり身に関して指摘する必要があるのは「選挙の際にどの政治家も重要視する “高齢者にも” 経済の落ち込みによる影響が現れたこと」でしょう。その1つが『年金支給額の引き下げ』です。

  年金の支給額は2年連続で引き下げとなり、参院選を前に自民・公明の両党は「引き下げ分を相殺する臨時給付金」の拠出を岸田首相に申し入れていました。

  しかし、年金の支給額は「『民間の平均給与』が2年連続で下がったから引き下げ」となったにも関わらず、年金生活者への支援金を出すことに批判が噴出。与党は申し入れの撤回を表明しています。

  『民間の平均給与』が下落した原因は「自粛を呼びかけて消費を冷え込ませた政府の新型コロナ対策」であり、『年金の支給額』も引き下げざるを得ない状況となったのです。

  コロナ対策を優先すれば “来年も” 『年金の支給額』は引き下げとなるでしょう。「景気が悪いと物価が高騰してても年金の支給額は引き下げられる」と高齢者が知ってしまったのですから、景気回復に取り組んでいる姿勢をアピールできなければ参院選での審判は避けられません。

  これが小池都知事が政策を変更するに至った大きな理由なのではないでしょうか。