厚労省、「新型コロナの5類への変更」を避けるため『検査なしで診断可』などルールを歪める

  後藤茂之・厚生労働大臣が1月24日の夜に記者団に対し、「濃厚接触者は検査なしでも医師が感染と診断が可能」などの方針を示したと NHK が報じています。

  また、重症化リスクが低い人は自宅療養を念頭にした対応に比重を移しつつありますが、そうすると『まん防』の適用条件を満たさないことを意味します。この点に触れない姿勢はアンフェアと言わざるを得ないでしょう。


後藤厚労相が2022年1月24日に記者団に述べた内容

  後藤厚労相は24日に「医療提供体制の確保」を目的に以下の呼びかけを行なっています。

  • 呼びかけの内容:
    • 重症化リスクが低い人(≒若くて基礎疾患がないなど)は抗原検査キット等は使って自ら検査した上で医療機関の受診を呼びかけ
    • 電話やオンライン診療などの遠隔医療の積極的な活用
  • 感染者の濃厚接触者に発熱などの症状が出た場合:
    • 検査を受けなくても医師が「感染した」と診断可能

  具体的には「重症化リスクが低い基礎疾患を持たない若者の外来への受診頻度を下げる」ことで「(高齢者への)医療提供体制を維持する」が狙いです。

  しかし、『この方針』は『まん延防止等重点措置』を適用するための前提を満たしておらず矛盾が生じます。新型コロナの感染症法上の分類を5類に変更させないためなら、何でもやる岸田政権の姿勢が示された決定と言えるでしょう。


『まん防』は「季節性インフルエンザと比較して重症リスクが相当程度高いこと」が適用の条件

  岸田政権は「重症化リスクの低い人は入院しなくても良い」と制限の緩和を示していますが、これは『まん防』と矛盾することです。特措法施行令では以下の記述があります。

 (新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態の要件)

第五条の三
 法第三十一条の四第一項の新型インフルエンザ等についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることとする。

  『まん防』を適用するには「重篤症例の発生頻度が季節性インフルエンザよりも相当程度高いと認めらえること」が条件です。しかし、岸田政権は「オミクロン株に罹患した際の重症化率がインフルエンザよりも高い」とは示していません

  それに “新規陽性者で最も多くの割合を占める若者” は「基礎疾患もなく重症化率が低いため医療機関での受診を控えさせるべき」との方針を新たに示したのです。

  「新型コロナが国民の生命や健康に影響を与える」と主張するなら、『検査なしで陽性(≒感染)と診断可能』との方針は誤りです。逆に「 “高齢者など一部の国民” の生命や健康に影響を与える」だけなら、『まん防』は過剰対応と言わざるを得ないでしょう。


現行法を維持するメリットがあるのは「コロナ対策補助金を得ている医療機関」

  新型コロナが『1類以上』に分類されている現状を維持することでメリットが大きいのは「コロナ対策補助金を得て(潤って)いる医療機関」です。

  専門家が感染拡大の原因と名指ししたエンタメ・観光・飲食・百貨店などの業界は軒並み大赤字です。その一方で医療機関は “補助金バブル” が訪れ、尾身茂氏が理事長を務める「独立行政法人」も収益を高めました。

  オミクロン株では「その場を共有すれば濃厚接触者」と範囲を拡大して欠勤者を増やしたのですから、これは対策ミスで本末転倒です。補助金を得ている業界の代弁者に対策を求めても「現行対策は有効」としか言いません

  「インフルエンザと同じで家族が発症した数日後に同じ症状が出たから新型コロナ陽性とするだけ」と理解を示すなら、新型コロナの『法律上の分類』も季節性インフルエンザと同じにすべきでしょう。



  “雑な対応” で済むのは「重篤になるリスクが低いから」です。『重篤になるリスクが低い疾患』に『重篤するリスクが高い疾患の対応』をすれば社会や経済に深刻な影響が生じるのは当たり前です。

  オミクロン株への対応でその過ちをしていることに気づいていないことは致命的と言えるのではないでしょうか。