内閣官房が11月末に『新規予約を抑制します』と発表済の状況で「国交省の要請は事後報告」と説明する松野官房長官

 物議を醸した『(国交省・航空局による)国際線の新規予約停止要請』に対し、松野官房長官が「首相にも私にも事後報告」と弁明していると NHK が報じています。

 しかし、この説明には無理があります。なぜなら、「国際線の新規予約を抑制する」と “内閣官房が” 2021年11月末に言及していたからです。自分たちでけしかけておいて「事後報告」と梯子を外す姿勢は姑息と言わざるを得ないでしょう。

 

「新規予約を抑制します」との『水際対策の強化』が明記済

 本件は内閣官房に掲載されている『水際対策強化に係る新たな措置』を確認する必要があります。2021年11月29日に表明された『オミクロン株に対する水際対策の強化(PDF)』には以下の項目が存在しているからです。

入国者総数の引下げ

 松野官房長官らは「国交省(の役人)による勇み足」で火消しを図っていますが、「2021年12月1日以降は『入国者総数を引き下げる』ために航空便の新規予約を抑制する」と明記されているのです。

 この資料は内閣官房のものですから、松野博一・内閣官房長官は(航空便の新規予約を抑制するよう要望が行くことは)知っていたはずです。知らなかったのであれば、「 “内閣官房長官” として致命的」と言わざるを得ないでしょう。

 

11月29日の会見で「過剰だとの批判は私が背負う覚悟」と啖呵を切っていた岸田首相

 “ヒットマン” の扱いとなっている国交省ですが、11月29日に岸田首相が行なった会見も後押しになっていることは容易に想像できます。なぜなら、以下の言及があったからです。

 未知のリスクには慎重の上にも慎重に対応すべきと考えて政権運営を行っております。まだ状況が分からないのに岸田は慎重過ぎるという批判については、私が全て負う覚悟でやってまいります。

 「『万が一を想定した対応』を採ったことへの批判は私が全て負う覚悟」と言い切っているですから有言実行をすべきでしょう。

 内閣官房は29日の段階で「航空便の新規予約を抑制します」と根回し済みで、同日に首相はメディアの前で「慎重の上にも慎重に対応すべき」と『水際対策の強化』を正当化したのです。

 デルタ株でさえ『入国後の隔離』だったにも関わらず、現時点で死者ゼロのオミクロン株が『入国の全面禁止』となるのは「迅速な対応をすることによるポイント稼ぎ」しか合理的な理由はないと思われます。

 

『オミクロン株への対応に関するタスクフォース』は「国交省大臣官房審議官(航空)」も一員として参加中

 官邸サイドは「国交省が勝手にやった」と責任を押し付けようとしていますが、それは無理でしょう。

 なぜなら、内閣官房長官をトップにする『オミクロン株への対応に関するタスクフォース』は「国交省大臣官房審議官(航空)」もメンバーだからです。

オミクロン株への対応に関するタスクフォースの構成員

 表向きの第1回会合が11月30日にあったのですから、そこで『水際対策の強化』に対する関係各所の進捗を確認しているはずです。

 国交省の官房審議官からは「航空便の新規予約の抑制」についての報告があったことでしょう。マスコミが本件を報じたのは「12月1日の午後」であり、“勇み足” になることを防ぐチャンスが存在したことは明らかです。

 『慎重の上にも慎重に対応する』と宣言した岸田首相が責任を取るか、国交省の役人を更迭するかのどちらは政権を維持するためには不可避と考えられます。

 

 『悪夢の民主党政権』を超えるポテンシャルを見せつけた『悪夢の宏池会政権』となる可能性は十分にあると言えるのではないでしょうか。