『新型コロナ対策』で雇用保険の積立金と雇用安定資金を消失させたのだから「政府の対応は失敗」と評されるべき

 「新型コロナによる影響が世界と比較して軽微」との理由で日本政府のコロナ対策は成功と主張する声があります。

 『コロナ禍』が軽微だったのは各種データで示されていますが、「『コロナ対策禍』は深刻」であることは事実です。「新型コロナによる影響は軽微な国で『コロナ対策』による経済不況が深刻」なのですから失敗と評されるべきでしょう。

 

コロナ禍の影響は世界水準を下回り、倒産や失業はリーマン時を下回るのは事実

 「日本のコロナ対策が成功した」と主張する根拠の1つは『コロナ禍の影響が世界水準よりも軽微』であることです。

 また、倒産や失業がリーマン時よりも少ないことが財務省・財政制度分科会の資料で示されています。

倒産・失業

 これらのデータからは「日本政府のコロナ対策は的確」と主張することは可能です。しかし、ネガティブな情報は触れられていないことに留意する必要があるでしょう。

 その代表例は「雇用保険の積立金が枯渇してしまっていること」です。

 

「日本政府の新型コロナ対策は経済的に大失敗」と言える根拠

1:リーマンショック時には枯渇しなかった雇用保険の積立金が枯渇

 日本政府の新型コロナ対策が失敗と言える根拠の1つが「雇用保険の積立金が枯渇」していることです。

雇用保険の積立金

 リーマンショックが発生した平成21年以降でも雇用保険の積立金は潤沢にあり、平成24年からは「保険料率の引き下げ」が行われています。しかし、コロナ禍で4兆円以上あった積立金は消失しました。

 また、これは『雇用安定資金』でも同様です。

雇用安定資金の残高

 雇用安定資金はリーマンショック時に半減して5000億円になりましたが、その後は経済が持ち直したため1兆5000億円にまで残高は増加しています。

 ですが、コロナ禍で残高は消失し、失業等給付金から1兆5000億円を借り入れるマイナスとなっているのです。この現実は(メディアなどに)問題視されていないのですから、事態は深刻と言わざるを得ません。

 

2:雇用は非正規雇用を中心に深刻な影響が生じている

 次に、政府・分科会が採った『新型コロナ対策』は特定の業界・職種に弊害が集中しています。

業種別・男女雇用形態別の動向

 「暮らし」に直結する雇用は女性の非正規・宿泊・飲食サービスに影響が生じており、回復の兆しは見当たらない状況です。

 雇用調整助成金は「経済が回復期を迎えた時に人手不足の状況を回避するため」に支払いが開始されたのですが、現状は『ニューノーマルによる7割経済』で “社内失業者雇用金” と化している有様です。

 『新型コロナ対策』で恩恵を得ている高齢者や医療業界は「経済的な損害は皆無」なのです。民間企業で働く現役世代が『コロナ対策禍』による経済不況を受けた挙句、増税と保険料率の引き上げのダブルパンチを受けることになるでしょう。

 

 “民間企業で働く一般的な納税者” が被る経済不況との引き換えで『社会保障の受益者である高齢者』と『医療業界』の豊かな生活水準を維持し続けようとする政府の方針は「失敗」として厳しく批判されるべきなのではないでしょうか。