知念実希人氏、『今夏の日本で欧州と同レベルの感染爆発が起きていた事実』を無視したデマを流す

 小説家で医師の知念実希人氏が「ワクチンが少しでも遅れていれば欧州と同レベルの感染爆発が起きて下手すれば万単位の死者が出ていた」と主張するツイートを行なっています。

 このツイートには事実と異なる点が複数あるため訂正されるべきでしょう。あまりにナンセンスで医療業界の身勝手さが現れた内容となっているからです。

 

8月下旬から9月初旬にかけての日本の新規陽性者数は欧州と同程度

 まず、知念氏は「日本は新型コロナワクチン接種が間に合ったので欧州と同程度の感染爆発は回避できた」と主張していますが、これは事実と異なります。

 Our World in Data で確認しますと、『日本の人口100万人あたりの新規陽性者数』は8月下旬から9月初旬にかけて『欧州での人口100万人あたりの新規陽性者数』と同水準なのです。

 その当時のワクチン接種率は日本と欧州で大差がないことは Our World in Data から確認できます。厳密に言うと、欧州の方が日本よりもワクチン接種率が高い状況で『人口あたりの新型コロナによる死者数』も多かった事実を無視すべきではないでしょう。

 

『幽霊病床』を無視して「たった3ヶ月前には完全に医療崩壊していた」と煽るのは醜悪

 知念氏は「たった3ヶ月前には完全に医療崩壊して地獄絵図と化していたんですけど」とツイートしていますが、医療崩壊が起きていたなら『幽霊病床』で私腹を肥やした医療従事者が真っ先に糾弾されるべきでしょう。

医療対応に関する検証

 政府分科会が11月16日に公表した資料(PDF)で「確保病床に対する利用率は 50〜60% だった」と認めているからです。

 確保病床数に応じた補助金を受給していながら、実際の稼働率が半分程度だったことを棚に上げて「完全に医療崩壊していた」と主張するのは噴飯物です。

 今夏に『患者の受け入れが不能』という事態を実際に招いていたのであれば、原因は「医療機関が医療資源の配分を間違えたこと」です。“身内” からの協力が得られなかったことを「地獄絵図」など過剰な表現を用いて煽ることはナンセンスと言わざるを得ません。

 

トリアージの議論すら未着手の “100年に1度のパンデミック”

 そもそも知念氏の主張に賛同する人々は「 “100年に1度のパンデミック” が襲来しているにも関わらず、『トリアージの基準』が専門家らの会議ですら議論されていないこと」を疑問に思うべきでしょう。

 欧米のような『人口あたりの新規陽性者数』となれば、用意した病床数では間に合わないため「助かる可能性のある人(≒若者や子供)から優先的に入院させる」という『基準』を定めておく必要が生じるからです。

 しかし、そのような議論が行われた形跡はありません。それに知念氏のロジックを拝借すれば「新型コロナワクチンを接種しなければ今夏の感染規模は昨年と同程度で済んだ」とも言えてしまうのです。

 知念氏の煽りツイートは問題視されて批判されるか、見向きもされないことが理想です。「医師免許を保持するがデータを読めない人物」として主張や見解は疑う必要があります。