「デルタ株で日本も昨年の欧米レベルに脆弱化した」との主張は事実誤認

 「デルタ株によって日本の新型コロナ感染状況は欧米レベルに脆弱化した」との主張があります。ただ、この主張は事実誤認と言わざるを得ないでしょう。なぜなら、ピーク時の新規陽性者を切り取った数値が根拠になっているだけだからです。

 

『人口あたりの死者数』は一貫して世界水準を下回る

 まず、新型コロナによる『人口あたりの死者数』では日本は世界水準を一貫して下回っています。欧州や北米は世界水準を上回ったままです。

 一方で『人口あたりの新規陽性者数』は8月下旬の “デルタ株の感染ピーク時” に『欧州水準』に到達したもののその後は激減しています。

 日本の新型コロナ感染者数が『欧州水準』に達したのであれば、(医療水準に大きな差がないことを考慮すると)死者数も『欧州水準』にまで到達したとしても止むを得ません。しかし、『世界水準』にまでも上昇しなかったのです。

 これらの事実から「デルタ株で日本も昨年の欧米並みに脆弱化した」との主張は当てはまらないと言えるでしょう。

 

馬場正博氏は「デルタ株の流行期」の「ワクチン接種」で『魔の2週間』が確認された事実を知るべき

 日本で今夏に『デルタ株による感染拡大』が起きた理由は「デルタ株の感染力がワクチン接種による『魔の2週間』で増強されたから」でしょう。11月9日のアドバイザリーボードで以下の資料(PDF)が示されているからです。

デルタ株流行期における新型コロナワクチンの有効性

 ワクチン1回目接種から13日目までの有効率は -6%。ワクチン未接種者よりも脆弱なのです。

 この事実が感染研の調査で明らかになったのですから「ワクチンの代替手段は人流制限かマスク」との主張は逆効果でしょう。『魔の2週間』がデータで示されてしまった以上は「ワクチン接種をするほど人流制限とマスクが必須」となってしまうからです。

 日本にいる全てのワクチン接種対象者が1週間の間で接種を完了できるのなら「人流制限」は検討に値します。しかし、対象者数と接種可能数(1日あたり約100万回)を考えると不可能ですから検討の対象にはなり得ません。

 

 欧米(=アメリカや西ヨーロッパ)と日本を含むアジア圏では新型コロナによる脅威が全く違うのです。前者は超過死亡が生じている国も散見されるため『コロナ禍』と言えますが、後者は『コロナ対策禍』が原因です。

 アジア圏に属する国が『欧米で採られている対策』を自国内の事情を勘案することなく採用することは愚行と言わざるを得ないでしょう。