「コロナ禍以前の生活を返して欲しい」と願う若者の衆院選での重視政策は『新型コロナ対応』になる

 10月31日に投開票が行われた衆院選の出口調査で「若者は『新型コロナ対応』を特に重視している」との結果が現れたと日本テレビが報じています。これは中高年が思う『新型コロナ対応』とは別の理由があると見るべきでしょう。

『新型コロナ対策』は多岐にわたる

 日本テレビは『新型コロナ対応』と一括りにしていますが、様々な対策が採られていることが実情です。そのため、「どの対策がどう評価されているか」を確認しなければなりません。

 今回の出口調査で『新型コロナ対応』が “特に重要視する政策” としてトップだったのは10代です。

 選挙権を持つ10代は「18歳と19歳」であり、その多くは学生でしょう。この年齢層は新型コロナに罹患しても重症化しないため、『行政(や学校または社会)が実施する対策の負担や弊害が直撃する立場です。

 部活の自粛、修学旅行の中止、オンライン授業と学生生活に制限が設けられているのです。

 「現状をコロナ禍以前に戻して欲しい」と願う学生が投票時の出口調査で『新型コロナ対応』と回答することは十分想定できますし、「感染拡大を食い止めるべき」と主張する中高年とは事情が異なっている現実を認識する必要があるでしょう。

 

「コロナ対策を頑張った〇〇党」との主張は見聞きするが、「採られたコロナ対策の効果」は聞こえて来ない

 衆院選が終わったこともあり、「コロナ対策を頑張った〇〇党」との表現を用いた総括を見聞きするケースがあります。ただ、どの政党(の候補者や支持者)も「対策を頑張った」としか言ってない状況です。

 与党であれば「採られたコロナ対策で △△ の効果を得ることができた」とデータに基づく主張をして欲しいところですが、そうした科学的根拠は示されていません。

 逆に野党であれば「(与党は採用しなかったが)我々が求めた対策を採った国では XX との効果が科学的に示されている」とデータを基に主張して欲しかったところです。

 ごく一部の議員はそうした活動をしていたと思われますが、政党としてデータを根拠に尾身氏や政府分科会を問い詰めたケースは皆無に近かったはずです。

 「専門家が自ら提案した対策の効果を(当人および第三者の)専門家に分析・説明させる」ということすら要求しなかったのです。「若者のことを真剣に考えて行動してくれる政治家は希少種」と見なさざるを得ないでしょう。

 

若者や将来世代が投票したくなる政策を掲げた政党があったとは思えない

 「若者は投票率が低いから政治の対応が後回しになる」と主張する人もネット上には散見されますが、この論調は良いものではありません。なぜなら、政治に「少子化対策や教育政策を後回しにしても良い」との言い訳を与えることになるからです。

 また、“将来の一般的な納税者” を養育する社会保障制度に予算を費やすことよりも “納税者に戻ることはない社会保障制度の現・受益者” に予算を優先的に投じる行為を容認することにもなってしまいます。

 社会保障制度の受益者である高齢者をお世話することで医療業界や介護業界は「民間企業で働く労働者や将来の納税者からの所得移転を受けている」のです。この状態は投票率で覆すことは不可能でしょう。

 将来の資産を食い潰している認識がない政治家が『シルバー民主主義』に邁進しているのですから、「絶望する若者」と「外国での就労機会を求める若者」に二分される不幸な未来が待ち構えていることになってしまうのではないでしょうか。