新型コロナ陽性者数が『予想外の激減』となって困るのは「行動変容しなければ感染拡大は抑えられない」との考えに固執する人だけ

  新型コロナの感染が急激に減少したことで困惑の声が出ていると産経新聞が報じています。

  世間一般に人は感染状況の改善を歓迎することでしょう。この状況で困るのは「行動変容をしなければ感染拡大は抑えられない」などと『誤った前提に基づく対策』を採ることを要求していた(専門家を含む)一部の人々です。

  そもそも新型コロナの新規陽性者数は「30代以下の若者の感染状況」を示しているに過ぎないものです。行動変容もワクチンも新規陽性者数の増減に与える影響は誤差の範囲であり、対策の前提条件を見直す必要があります。


新規陽性者数の推移(大阪府)

  まず、新型コロナ陽性者数の “波” は「3ヶ月周期」です。ピークアウトから約6週間後が新規陽性者の底値となり、若い世代での新規陽性者数が前週の2倍となってから約6週間後がピークとなる周期性があるからです。

  陽性者は「20代」が初期の段階から最も多く、今夏の『デルタ株』による感染拡大では「10代や30代」も以前よりも多い陽性者数が報告されることとなりました。これが “山” が高くなった理由です。

  一部の専門家は「行動変容で新型コロナの感染は制御できる」と考えているようですが、これは間違いです。

  『人流』と『新型コロナの感染状況』に相関があるなら、30代以下の若者の行動が「今夏はゴールデンウィークの倍」である必要があります。また、『大阪府の80歳超』は『10代』や『50代』に匹敵するほどゴールデンウィーク中は活発だったことになります。

  これらの事実から「専門家が提唱する前提には誤りがある」との結論を導かなければならないでしょう。


『真の感染条件』を解き明かすことができればノーベル医学賞は確実

  大阪府で予想を上回るスピードで若者の新型コロナ陽性者数が減少している理由は「『真の感染条件』を満たす若者が激減しているから」でしょう。

  ただ、現時点で誰も『真の感染条件』が何なのかを解き明かせていません。もし、解き明かした人が出て来れば、今年のノーベル医学賞はその人が受賞最有力です。

  確実に言えることの1つは「行動変容(や人流)が感染状況に与える影響は軽微」ということです。

  日本で今夏に発生した『デルタ株による感染拡大』はインドネシアでも起きていたからです。両国での「感染拡大の速度・人口比で見た感染ピーク時における陽性者数・感染収束の速度」はほぼ同じです。

  日本の専門家が『感染激減の要因』として挙げる「行動変容・天候・ワクチン接種」はインドネシアでは該当しません。専門家の分析が正しいなら、インドネシアでの新型コロナ感染は収束することは起こり得ないのです。

  したがって、日本の専門家の見解は「結論ありきで使い物にならない」との烙印が押されるべきでしょう。


ワクチン接種も新規陽性者数を抑制する決定打ではない

  なお、ワクチン接種を「新規陽性者数を抑制する決定打」として扱うことも不適切です。なぜなら、『イスラエルでの新型コロナ感染状況』と『(イスラエルと国境を接する)ヨルダンでの感染状況』の推移が反証となるからです。

  『ワクチン接種先進国』であるイスラエルに対し、ヨルダンで新型コロナワクチンの2回目接種を終えた人の割合は 30% ほどに留まっています。しかし、ヨルダンでは今夏の新型コロナ感染爆発は起きていないのです。

  これまでヨルダンは「隣国イスラエルでの新型コロナ感染拡大が収束することと入れ違い」で感染が急拡大していました。今夏はそのパターンが崩れた理由を究明することが研究者や専門家の責務となるはずです。

  新型コロナワクチンに『当初から言われていた感染予防・発症抑制効果』があるなら、今夏は “感染爆発に見舞われたヨルダン” と “凪だったイスラエル” の構図でなければなりません。しかし、現実に起きたことは真逆でした。



  日本では “重症化しにくい若者” が新型コロナの陽性者数を引き上げる大きな要因です。新型コロナワクチンは「新規陽性者数の抑制」への貢献は低く、期待できるのは「重症化の抑制」ですから『若者への接種』は合理的とは言えないでしょう。

  「行動変容で新型コロナの感染をコントロールできる」や「新型コロナワクチンを接種すれば問題はすべて解決」との主張は間違いであり、誤った主張を訂正しようとしない専門家がコロナ禍を引き起こしていると判断せざるを得ないと思われます。