【イスラエル】 2021年10月1日から『有効期限が半年のワクチンパスポート』などの導入を表明

  イスラエル保健省が2021年10月1日からの『グリーンパスの導入』と『ポリシーの変更』を表明していましたので紹介いたします。

  『グリーンパス』は日本で言う『ワクチンパスポート』に該当するものですが、“新型コロナからの回復者” もワクチン接種者と同じ扱いを受けられることが違いです。ただ、有効期限が「わずか半年」という点が特筆事項と言えるでしょう。


イスラエル保健省が発表した『グリーンパス』の内容

  イスラエル保健省は8月28日付で「2021年10月1日から『グリーンパス』の定義を以下のように変更する」と発表いたしました。

  • A person vaccinated with three doses: The Green Pass shall remain effective for six months from the date of the third vaccination
  • A person vaccinated with two doses: The Green Pass shall remain effective for six months from the date of the second vaccination
  • A person who recovered from coronavirus disease: The Green Pass shall remain effective for six months from the date of the recovery certificate
  • A person who recovered from coronavirus disease and received a vaccine dose: The Green Pass shall remain effective for six months from the date of vaccination.

  有効期限は「3回目のワクチン接種日から6ヶ月」、「2回目のワクチン接種日から6ヶ月」、「新型コロナ罹患による回復日から6ヶ月」のいずれかと定義されることになりました。

  この決定は「新型コロナワクチンの有効期限は6ヶ月ほど」と見ているからだと考えられます。

  イスラエルの感染状況を見る限りでは “新規陽性者数を抑える感染抑制効果” はブースター接種では得られていません。終生免疫を得ることは望み薄ですから、『ワクチン接種による集団免疫』の達成を目指すことは経済や社会にとって「百害あって一利なし」となるでしょう。


イスラエルの新型コロナによる感染状況

  イスラエルの週別・新規陽性者数と死者数を人口10万人あたりに換算してグラフ化したものが以下です。

  8月29日から9月4日までの1週間における『人口10万人あたりの週別・新規陽性者数』は743.3。これまでのピークは今年1月10日から16日までの 625 でしたから「感染は深刻」と見なされることでしょう。

  『人口10万人あたりの週別・死者数』は「2」と今年1月の半分程度ですが、このグラフは「反時計回りにプロットされること」が基本です。

  これは陽性反応者数のピークアウトに続き、死者数がピークアウトすることが理由です。

  また、イスラエルは高齢者の 90% がワクチン接種を完了し、8月初旬からはブースター接種(=3回目の接種)を開始済みです。

  すでに 70% 近くの高齢者が3度目の接種を終えた状況で感染が続いているのですから、ワクチン接種による効果を誇ることは難しいと思われます。


9月はユダヤ教の祝日が集中しているので『グリーンパス』の導入は難しい

  新型コロナの感染拡大が続くイスラエルで『グリーンパス』の導入が「10月1日から」になっているかと言いますと、9月は『ユダヤ教に関する祝日』が目白押しだからです。

  • 6日: ユダヤ新年前夜
  • 7日・8日: ユダヤ新年
  • 15日: 贖罪の日前夜
  • 16日: 贖罪の日
  • 20日: 仮庵祭初日前夜
  • 21日〜25日: 仮庵祭
  • 27日・28日: 仮庵祭

  『ユダヤ教に関する祝日』で店舗などは開かれないのですから、『ロックダウン(=罰則付き外出禁止令)』を出しても徒労に終わるだけです。したがって、10月以降に『グリーンパス』を用いた感染対策を講じる準備をしておくことは合理的です。

  ただ、9月の新型コロナ感染状況がどうなるかは不透明です。

  家庭内感染が主要な感染ルートなら、家族での時間が増える9月の新規陽性者数は「増加の要因」が1つ増えます。一方でデルタ株がほぼ蔓延したことは「減少要因」になるため、その “凌ぎ合い” の結果が新規陽性者数に現れると予想されます。



  イスラエルでの『現行のデルタ株』による新規陽性者数は9月中旬には漸減するでしょう。これは人口925万人のイスラエルで「1日1万人超の新規陽性者数を計上し続けるのは不可能」だからです。

  そもそも、重症化しにくい若者や子供が含まれた新規陽性者数を判断材料にすることは不適切です。用いるべきは「新型コロナによる死者数」と「超過死亡」の2要素でしょう。

  もしくは重症者数(や死者数)の先行指標となり得る『高齢者や基礎疾患を持つ中年の新規陽性者数』であるべきです。まずはワクチン接種先進国であるイスラエルでの「新型コロナによる死者数の推移」を把握することが重要と言えるのではないでしょうか。