「若者と同等の免疫力を半年ほど得たワクチン接種者」にだけ “一定の自由” を与える『ワクチン・パスポート』は愚策

 8月25日に菅首相が『ワクチンパスポート』の積極的な活用に前向きな姿勢を示したことに対し、加藤官房長官も(翌日の)記者会見で追従するコメントをしたと NHK が報じています。

 ただ、この政策は愚策です。なぜなら、ワクチン接種で得られる効果は(当初の見立てとは大きく異なり)「健康な若者と同程度の免疫力を長くて半年ほど得るだけのもの」だからです。

 “ワクチン未接種の若者” は制限が設けられたままで、ワクチン接種者だけに自由を与える方針は『科学的根拠を欠いた著しく不公平な政策』と言わざるを得ないでしょう。

 

 新型コロナウイルス対策をめぐり、菅総理大臣は25日「ワクチン接種証明書の積極的な活用の方法を含め、飲食店の利用、旅行、イベントなど日常生活や社会経済活動の回復もしっかり検討する」と述べました。

 これに関連して、加藤官房長官は記者会見で「国内で接種の事実を証明するに当たり、『接種済証』を用意していただくということは可能だ」と述べました。

ワクチンパスポート “国内での活用の在り方検討” 官房長官

 

ワクチン接種効果の現状は「20代(や30代)と同じ免疫力を一時的に手に入れること」

 ワクチン・パスポートで問題となるのは「ワクチン接種で得られる効果が当初の見立てから大きく乖離していること」です。

  • 新型コロナワクチンの接種効果として言われていたこと
    1. 変異株にも有効
    2. 感染予防効果が期待できる
    3. 他者に新型コロナをうつさない
    4. ワクチン接種による効果は1年以上
  • 新型コロナワクチン接種による実際の効果
    1. 変異株への有効性は(かなり)低下
    2. 感染予防効果は(デルタ株には)あまりない
    3. 鼻腔内のウイルス量はワクチン未接種者と同等(※ デルタ株)
    4. ワクチンの接種効果は長くて半年ほど

 「ゲーム・チェンジャー」と一部の医師などが(今年5月から6月にかけてのワクチン接種先進国であるイスラエルの感染状況を根拠に)新型コロナワクチンの効果を持ち上げていましたが、7月下旬以降のイスラエルの現状を無視していることは軽視できません。

 2021年8月時点で新型コロナワクチン接種に対する効果を評価するなら「最長で半年ほど『健康な20代(または30代)の若者と同程度の免疫力を入手できる」となるでしょう。

 この事実があるのですから、ワクチン接種者に恩恵がある『ワクチン・パスポート』は大いに問題があると言わざるを得ません。

 

『若者が持つ自然免疫』の方が『新型コロナワクチン接種で得た免疫』よりも長続きする

 新型コロナワクチンで接種推進者の思惑と最も大きな乖離が発生しているのは「効果の持続期間」でしょう。(『こびナビ』などの “レク” を受けた)河野太郎大臣は「1年は効果がある」と主張していますが、実際は半年も持たないことはイスラエルが実証済みです。

 終生免疫を得られるなら、『HPVワクチン』のように接種を前向きに考える若者は少なくないと思われます。

 しかし、半年ほどで消失するワクチン接種を積極的に行う若者は少数派でしょう。若者は新型コロナに罹患しても重症化率は低く、ワクチン接種をしたことによる恩恵は接種者自身にはほぼ皆無です。

 しかも「若者が持つ自然免疫」は「半年で効果が消える新型コロナワクチン」とは違って半年で効果が消えることはありません。“接種の半年後には若者よりも新型コロナ罹患時には多くウイルスを排出し重症化しやすい人物” が優遇されるのは政策として誤っているのは明らかです。

 この点を無視して進める政策は良い結果を生まないことは言うまでもないでしょう。

 

若者への行動制限を呼びかけた政府・分科会・医師らは「若者や子供に謝罪」すべき

 『ワクチン・パスポート』を導入したいのであれば、政府や分科会は「行動制限の対象群としてきた若者や子供への謝罪」が不可欠です。

 ワクチン接種効果は「若者(や子供)と同程度の免疫を手にすること」であり、それを理由に『(高齢者を中心とする)ワクチン接種者』にのみ自由を与えることは辻褄が合わないからです。

 これまで若者(や子供)は「当人が無症状の内に新型コロナの感染を広げている」とスケープゴートとして扱われ、批判の対象にされて来ました。ワクチン接種者が彼らと同じ状況にあると判明した途端、「ワクチン接種済みだから問題ではない」は通用しないでしょう。

 「ワクチン接種効果の有無」ではなく「ワクチン接種行為の有無」が判断基準になっている時点で『ワクチン・パスポート』の設計自体が問題視されなければなりません。

 「認知症を患った人物に期間無制限の運転免許を付与しようとしていることと同じ」との認識を持つ必要があるのではないでしょうか。