2021年6月の人口動態統計速報: 出生数は当月までの累計で -6.0%、死者は5月に続いて高水準

  厚生労働省が人口動態統計の速報(2021年6月分)を発表していましたので紹介いたします。

  出生数は前年度から2000人減の7万1031人、死者は8300人増の10万8734人となりました。『2021年6月の出生数や死者数の傾向』は「2021年5月分と同様」です。

  ただ、近畿を中心とした(アルファ株による)新型コロナ感染拡大のピークは「5月」でしたから、「6月分のデータを用いた新型コロナによる超過死亡が発生」と主張する根拠は先月よりも弱まっていると見るべきです。


人口動態統計速報(2021年6月分)

  前年(2020年6月)と比較した人口動態統計速報は以下のとおりです。

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  出生数の減少は「当月分は近年の減少率どおり」ですが、今年1月の大幅減が響いたことで「6月までの累計で -6.0%」と深刻な状況になっています。下半期で出生数の大幅増が見込める要因が見当たらないため、少子化は加速することになるでしょう。

  2021年6月に報告された死者数は「『推計死亡数・高位』に近い数値」でした。

  この数字を使って「新型コロナの感染拡大による超過死亡が起きた」と主張することは可能ですが、約2800人の死者が報告された5月と比較すると6月の新型コロナによる死者は「約1800人」です。そのため、この点を踏まえた論調が必要と言えるでしょう。


出生数(2021年6月・人口動態統計速報)

  出生数は2021年1月分が「目を疑う数値」となっています。将来人口推計の出生数・低位を大きく下回る出生数なのですから、これが年間出生数にも影響することは不可避な状況です。

  今年下半期で挽回できれば少子化の進行を少しは食い止められるでしょう。しかし、昨年の年末から今年の年始にかけて政府や医療業界から「自粛」を強く求めたため、挽回はほとんど期待できません。

  この現実を無視しているのですから「政治は少子化問題に取り組む気がない」と不信感が蔓延するのは当然の結果だと言わざるを得ません。


死者数(2021年6月・人口動態統計速報)

  次に死者数ですが、このテーマを扱う際には「前提となる『2020年の年間死者数』と『2021年の年間 “予想” 死者数』の確認」が必須です。

  尾身氏らは新型コロナを「100年に1度のパンデミック」と評していますが、『日本での2020年の年間死者数』は(予想された140万人を下回る)約137万人でした。

  高齢化が進行する日本は2040年まで毎年2万人ずつ死者が増加する将来推計が出されています。

  つまり、“2020年に死亡する可能性が高かった後期高齢者” が2021年に死亡することは許容範囲であり、その現実を棚に上げた議論はするに値しないのです。

月別の死者数(全国)

  なお、月別の推計死亡数と実際の死者数を比較したグラフは以下です。

  2021年6月の死者数は『推計死者数・高位』に近い数値でした。大阪府では『推計死者数・高位』を超える死者数を記録しており、状況としては「5月と同じ傾向にある」と言えるでしょう。

  ただ、記事の前半で触れたように『6月に報告された新型コロナによる死者数』は「5月よりも 35% 減」となっています。昨年上半期の死者数は『推計死者数・低位』を推移していましたし、その “負債” が返済されていると言うことは可能です。

  したがって、「5月と同水準で新型コロナによる超過死亡が発生している」と主張する専門家は「35% 減」の部分を都合良く無視している可能性が高いため、(該当の主張は)聞き流すべきと言えるでしょう。