政府が表明した『コロナ病床を使った補助金詐欺の摘発』に批判的な医師がいるのは摩訶不思議

  厚労省と東京都が都内の全医療機関に対して新型コロナ患者向けの病床確保と最大限の受け入れを要請し、人員不足など正当な理由なく要請を拒んだ場合は勧告を行い、それでも従わない場合は医療機関名を公表することを示唆しました。

  このニュースに一部の医師(を名乗るツイッターアカウント)を中心に反発の声が出ていますが、奇妙なことと言わざるを得ないでしょう。なぜなら、『コロナ病床を使った補助金詐欺』が撲滅されることで真面目に働く医療従事者が困ることはないからです。


“論点逸らし”で補助金詐欺を擁護するようなツイート

  医療機関側に理解を示すバズったツイートの代表例が以下でしょう。

  厚労省や東京都が問題視しているのは「新型コロナ患者を受け入れる『即応病床』の使用率が約 60% なのに医療側から逼迫状態だ」との声が出ているからです。

  したがって、このツイートは引用先の記事を理解しておらず、コロナ病床を使った補助金詐欺を擁護する内容との批判を受けても仕方のない投稿と言えるでしょう。


東京都での新型コロナ病床数と入院患者数の推移

  東京都が確保している新型コロナ患者用の病床数と新型コロナで入院中の患者数の推移は次のとおりです。

  日経新聞が8月20日に「政府、コロナ病床の実態調査へ」と報じた際、約6000床の『即応病床』を有する東京都は3800床ほどで「医療逼迫だ」との声が現場から出ていました。

  『即応病床』は「新型コロナの受け入れ要請を即座に応じることができる病床」です。したがって、使用率 60% ほどで逼迫することはあり得ません。もし逼迫しているなら、何らかの “不正” あるのでしょう。

  政府が実態調査に乗り出すと報じられてから、東京都では入院患者数が増加し、その数は4000人に達しました。このことからも “コロナ病床を使った補助金詐欺” が行われている可能性は高いと言えるはずです。


補助金詐欺に手を染めていない医療機関が受け入れ要請を拒んでも世間に公表されることはない

  なお、厚労省(=国)と東京都が行う受け入れ要請を拒んだ場合であっても、正当な理由があれば医療機関名が公表されることはありません。

厚生労働省と東京都は23日、改正感染症法に基づき都内の全ての医療機関に対し、新型コロナウイルス患者向けの病床確保と最大限の患者受け入れを要請した。2月の同法成立後、国としての要請は初めて。感染急拡大による病床逼迫を受けた措置。人員不足など正当な理由なく要請を拒んだ場合は勧告し、従わなければ医療機関名を公表することができる。

国、初の病床確保要請: 共同通信

  1. 『即応病床』や『確保病床』を申請した医療機関を中心に受け入れ要請
  2. 「人員不足」など正当な理由なく要請を拒んだ場合は『勧告』
  3. 『勧告』に従わない場合、医療機関名の公表へ

  端的に言うと、申請した『即応病床』の稼働率が 60% 未満の医療機関から『勧告』を受けることになるでしょう。1床あたり約2000万円の補助金が出ているのですから「補助金は受け取るが患者は見ない」は通用しません。

  なぜなら、病床はベッド数の意味ではないからです。病床は臨床医や臨床看護師を含めて算出されるものであり、世間一般で持たれているイメージと混同させて煙に巻こうとする姿勢は問題視されるべきです。



  『コロナ病床の設置をして補助金を取得するもコロナ患者の受け入れは拒否』をする医療機関が摘発されて困るのは「該当する医療機関や共犯関係にある医師」ぐらいです。

  新型コロナ患者の即応病床や確保病床を申告していない医療機関は『確保の要請』が来ても、「医療の介入が必要な疾病は新型コロナだけではない」と『正当な理由』による弁明が可能です。

  不正を働く同業者が摘発されることを歓迎できないのは「自分が摘発される恐れのある側にいる」との事情を抱えている場合など世間や周囲から同情される余地の少ない場合に限られるのではないでしょうか。