『古いデータ』や『誤った情報』を基にワクチン接種を促すサイトを「分かりやすい」と啓蒙する河野太郎氏の行為は問題

 ワクチン接種担当大臣を務める河野太郎氏が Fizz-DI (Fizz Drug Information) に掲載されている新型コロナワクチン情報を「分かりやすい」と評するツイートをしています。

 問題は該当サイトで触れられているデータが古かったり、誤った情報を基にワクチン接種を勧めていることでしょう。そのチェックができていないのは『ワクチン接種担当大臣』として迂闊と言わざるを得ません。

 

Fizz-DI のサイトに掲載されている内容の問題点

 Fizz-DI は薬剤師である児島悠史氏が運営しているサイトです。児島氏のスタンスは「よほどの理由がない限りはワクチン接種を推奨します」とのものですが、問題視されるべきは『接種効果』や『リスク評価』の段階で誤りが含まれていることです。

 具体的に指摘することにしましょう。

1: ワクチン接種による有効性

 1つ目の問題点は「(ファイザー製の)新型コロナワクチンの有効性」です。

Fizz-DIで紹介されている有効性

 有効率 94.6% と紹介されていますが、この情報が古いのです。

 「直近に発表された情報に更新されていない」との指摘は難癖でしょう。しかし、有効率がガタ落ちであることは『ワクチン接種先進国』であるイスラエルからの発表で示されています。それが反映されていないのは問題と言わざるを得ません。

2:若者の重症化率

 2つ目の問題点は「若者の重症化率」です。

ワクチン接種のメリットとデメリットの比較(Fizz-DIより)

 児島氏は「若い人でも約1.0%が重症化し、〜」と紹介していますが、これは悪質なミスリードです。

 40代や50代が「若い人」との認識で表現しているなら主張内容に間違いはありません。しかし、参照先として紹介している資料を確認した限りでは「若い人=20代・30代」の意味で用いており、この部分も訂正すべき箇所と言えるでしょう。

 

Fizz-DI で言及されていない事実

1:ワクチン接種による有効性は約半年で消える

 まず、『ワクチン接種による有効性』には期限があります。7月6日にイスラエル保健省がワクチン接種効果に対する発表を行ったのですが、この時点で感染・発症の予防効果はどちらも64%でした。

 また、同22日の発表分では「2021年1月に2回目接種完了者」の感染・発症予防効果が激減。

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 7月17日までの調査分で「感染・発症の予防効果は16%」と低い数値となっています。

ワクチン接種による抑止効果(調査の期間:6/20〜7/17)
2回目接種 感染 発症 入院 重症化
2021年1月 16% 16% 82% 86%
2月 44% 44% 91% 91%
3月 67% 69% 89% 94%
4月 75% 79% 83% 84%
全体 39%
【9% - 59%】
41%
【8.7% - 61.2%】
88%
【78.9% - 93.2%】
91%
【82.5% - 95.7%】

 2度のワクチン接種で『終身免疫(または数年以上の長期免疫)』が得られるのであれば、このような上述の内容が報告されることはないでしょう。しかし、現実には「半年ほどで接種効果が消えている」のです。

 これは前提部分が崩れていることを意味しているのですから、速やかに修正されるべき事項と言えるはずです。

2:若者の重症化率が1%というのは『発熱4日間ルール』が適用された特殊条件下でのこと

 次に児島氏は「若者も1%の確率で重症化する」と主張していますが、これは公式に発表された資料から恣意的な抜き出しを行った悪質なミスリードです。

新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2021年8月版)

 厚労省が発表している『新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2021年8月版・PDF)』を確認すると、「10代や20代でも1%の確率で重症化する」と読み取れる記述があります。

 ただし、その数値は「2020年1月から4月」のものです。当時は『発熱4日間ルール』が適用されていたため、無症状者(や軽症者)はノーカウントで “分母” には加わりません。

 要するに「現在の『中等症Ⅰ』ぐらいの症状を訴えた人からどれだけ重症者が出るか」を示した指標なのです。若者ほど無症状・軽症が多いのは1年前から言われていました。

 30代以下では『2020年1月から4月時点での重要化率』と比較すると「(第2波の襲来があった同6月から8月は)2桁以上も重症化率が下がっている」のですから、この情報がなぜか反映されていないサイトの情報だけで判断するのは危険と言わざるを得ないでしょう。

 

 少なくとも、情報がアップデートされていないサイトをワクチン接種担当大臣が推奨することは問題です。

 「正しい情報」を与えるよりも「ワクチン接種に都合の良い分かりやすさ」を優先すると『薬害』ならぬ『ワク害』が起きるリスクが高まります。大臣として軽率な啓蒙は慎むべきではないでしょうか。