尾身氏が「気の緩み(による新型コロナ感染拡大)」を指摘した東京都でRSウイルスの感染者数が7月中旬にピークアウト

  デルタ株による新型コロナの感染拡大が東京を中心に発生していることに対し、政府分科会の尾身茂会長が衆院・厚労委員会で「オリンピックが人々の意識に気の緩みを与えた」と主張しています。

  しかし、この論理は通用しないでしょう。なぜなら、5類感染症である『RSウイルス』の都内感染者数が「7月中旬にピークアウト」しているからです。統計を確認できないのは致命的です。


  政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は4日の衆院厚生労働委員会で、東京を中心とした感染の急拡大について「オリンピックが人々の意識(気の緩み)に与えた影響はある」と語った。

尾身氏「五輪の影響ある」


都内での新型コロナとRSウイルスの流行状況

  RS ウイルスは呼吸器系の感染症で患者の大部分が乳幼児です。「7月から9月末が流行期」で2019年まではその傾向が見られました。

  しかし、新型コロナの感染が広がった2020年はRS ウイルスの流行が全くなく、今年(2021年)に東京都では例年の3倍もの感染者を出す “極めて深刻な状況” となっています。

  RS ウイルスには特別な治療方法は存在せず、症状に応じた対症療法が基本です。予防には「手洗いと咳エチケット」が有効策として東京都が紹介しているため、人為的に減らせる感染者数は極めて限定的と言わざるを得ないでしょう。


「7月後半からの気の緩み」が新型コロナを感染拡大させたなら、RSウイルスの感染は高止まりしてるはず

  尾身氏の主張には矛盾があります。『気の緩み』で新型コロナの感染拡大が起きているのであれば、「新型コロナと同じ予防策が推奨されているRSウイルスの感染者数も連動している」はずだからです。

  ところが報告されたデータは真逆です。

  RSウイルスの感染者数は第19週(5月10日〜16日)から上昇を開始。その一方で新型コロナの陽性者数は第4波がピークアウトして下降している状況でした。

  RSウイルスの感染者数は第28週(7月12日〜18日)にピークを迎えたのですが、新型コロナは「その頃から感染拡大が本格化」しています。

  「RSウイルスの感染だけ」や「新型コロナの感染だけ」に効果がある予防策は存在していないのですから尾身氏が口にする『気の緩み』は相手にする必要がないことは明らかでしょう。


  自然治癒力で回復する人を「念のため」との理由で入院させる必要はありませんし、そのための費用を国が負担することもナンセンスです。

  合理的に判断できる人をトップに据えておかないと必要な時に費やせる予算が枯渇する事態が起きてしまうのではないでしょうか。