IEAの事務局長が懸念を示す『エネルギー基本計画』の採用は見送るべき
読売新聞によりますと、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長が日本政府の『エネルギー基本計画』に対して「原発も役割を果たすべき」と注文も付けたとのことです。
ビロル氏は温室効果ガス排出ゼロの旗振り役ですが、苦言を呈している部分には耳を傾ける必要があるでしょう。小泉環境相などが猛プッシュする「再生可能エネルギーのフル活用」だけでは現実的に目標を達成することは不可能だからです。
読売新聞が報じた記事
読売新聞が7月26日付で報じた内容は以下のとおりです。
国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長(63)が、読売新聞のインタビューに応じた。日本政府が21日公表したエネルギー基本計画の原案を「再生可能エネルギーの大幅な増加計画は良いステップだ」と高く評価した。一方で、日本には再生エネの活用に適した土地が少ないことを挙げ、「原子力発電も役割を果たすべきだ」と訴えた。
日本の再エネ計画、IEA事務局長が評価…「原発も役割果たすべき」
ビロル氏はネットゼロの旗振り役ですから、小泉環境相が打ち出した「46%減」は諸手を挙げて歓迎します。
ただ、現実的に達成しようとすると日本経済は徹底的に破壊されることになるでしょう。ピロル氏が言及するように日本には太陽光などの再生可能エネルギーを活用するために適した土地はほとんど残っているからです。
国土面積に占める可住地の割合が低い日本
日本は「急峻な国土」を持つ国であり、欧米と比較すると可住地の割合が低いことが国交省の資料(PDF)でも示されています。
日本は可住地の割合が 30% を下回っています。残りの約 70% は「標高 500m 以上の山地」や「森林・湿地」など居住には無抜きな土地です。
イギリス・フランス・ドイツでの可住地の割合は 60% 超ですから、日本は「再生可能エネルギーを活用するために適した土地は欧米の半分にも満たない」との現実を直視する必要があります。
しかも日本はドイツよりも太陽光発電の導入が進んでいる
再生エネに適した土地が少なくても、導入がほとんど進んでいなければポテンシャルは残されています。しかし、日本は現状の太陽光発電が「発電量」でも「面積あたり」でもドイツを上回っているのです。
この資料は環境省の公式サイトから確認できます。「資料5 エネルギー政策の現状について」が該当の資料です。
2016年の時点でドイツを上回る太陽光の発電量ですから、再生可能エネルギーを活用するために適した土地がドイツよりも少ない日本で「上乗せ」は期待できません。ましてや「再生可能エネルギーの倍増」など不可能です。
前提を少しでも認識していれば、「原発も活用すべき」との声が出てくるのは自然なことでしょう。
原発や再生可能エネのどちらかにオールインをするのは得策ではありません。既存技術をフル活用し、新たな技術を確立させるための研究開発費を稼ぐことが必要と言えるのではないでしょうか。